10

ルーナ・ラブグッドはほわほわした雰囲気が個性的な女の子で、同じレイブンクローの一年生だ。
私と女子寮で同室になり、一番の友人になった。
アニメーガスだと呆気なく気付かれてしまった時は、ホグワーツで請け負う役目も終わりだと思った。
でも、ルーナは他言せず、深く詮索もしない子だった。
レイブンクローの女子寮で、ルーナと私が最初から二人部屋なのは、ダンブルドア校長の計らいかもしれない。

朝一の談話室で、私は借りていた本を本棚に片付けた。
次はどれを借りようかと考えていると、ルーナがまた裸足で歩いているのを見つけた。
朝から何処かへ出かけていたらしい。

「ルーナ、靴は?」
「分からないンだ。
何処かに行っちゃった」
「他に予備の靴はないの?」
「裸足でも平気だよ」

私は眉を潜めた。
不思議ちゃんのルーナはルーニー≠ツまり変人≠セなんて呼ばれていて、いじめられがちだ。
私が傍にいる時は、いじめられているような様子はないのに。
ルーナ曰く、特にスリザリンの女子からからかわれたり、物を盗られたりしているそうだ。
でも、いじめっ子は滑稽な体質のスリザリンだけじゃない。
レイブンクロー生の内部にも、そういう子はいるのだ。

ふと視線を感じた。
大きな地球儀の傍にあるソファーに、一人で腰を下ろしている上級生の男子生徒がいた。
分厚い本を広げながら、此方を一瞥して聞き耳を立てている。
彼は以前もルーナの教科書を盗んだ経歴の持ち主だ。
その時もこうして、背後から密かに杖を向けて開心術をかけた。

レジリメンス――

脳内にすうっと入ってきた記憶に、私は溜息をついた。
開心術に勘付かれる前に、私は彼が開いていた本を彼の顔面にぶつけた。
何事かと狼狽える彼を尻目に、私はルーナの手を引いた。
とりあえず、女子寮でルーナに他の靴を履かせないと。

「行こう、ルーナ」
「また見つけたンだ?」

開心術は私の得意な魔法の一つだ。
彼がルーナの靴を授業中に盗み、廊下の石像の裏に隠した映像が脳内に流れてきた。
この魔法は本当に必要な時にしか使わないようにしている。
開心術が得意だと知られると、何かと面倒だからだ。

「アフロディーテは凄いね。
一緒にいると、物がすぐに見つかるもン」
「失くさないようにね?」
「ごめんね、あたしよくぼーっとしちゃうンだ。」

私が猫のアニメーガスであり、開心術を得意とするのを知りながらも、ルーナは仲良くしてくれる。
心優しくて思い遣りのある女の子なのに。
ミステリアスな雰囲気が、人を誤解させてしまいがちなんだ。



2019.6.23




page 1/1

[ backtop ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -