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授業の空き時間というのは、図書館が比較的空いていて、快適だ。
私はテーブルに羊皮紙や教科書を広げ、薬草学の宿題を進めていた。
順調に進んでいると思う。
一緒に図書館を訪れたルーナは、魔法生物の本を探しに行っている。
すると、私の前方に人影が出来た。
図書館仲間のハーマイオニーだ。

「アフロディーテ、こんにちは」
「こんにちは、ハーマイオニー」
「此処に座ってもいいかしら」
「是非」

ハーマイオニーと話すようになったのは、あの双子がきっかけだ。
私が双子と三人で話していた時、双子がハーマイオニーにも話しかけた。
それがきっかけで、ハーマイオニーと私は図書館でも話すようになった。
ハーマイオニーは勤勉で、頻繁に図書館を利用している。
時々、ハリーとロンも一緒だ。
この二人と始めて話したのは、図書館だ。

「そういえば、聞いて?
この前、アフロディーテにそっくりの猫がいたの!」

ドキリとしたのは秘密だけど、私は日に日に演技が上達している気がする。
ハーマイオニーが不審に思っている様子はない。

「あなたの綺麗な髪と同じ色の猫よ」
「私も逢った事があるの」
「本当?
あなたもびっくりしたんじゃない?」

アッシュブロンドの体毛を持つ猫なんて、私の知る限りでは見た事がない。
同じ髪色の魔女は、知っている限りでは実母だけだ。
ハーマイオニーは悲観するような口調で言った。

「誰かが猫をあなたの髪色にしようとして、魔法をかけたのかもしれないわね。
あなたにはファンが多いから」
「ファン?」
「もしかしたら自由に体毛の色を変えられる魔法生物なのかもしれないわ」

ファンが多いと言われても、よく分からない。
物心つく前からアニメーガスだった私は、当時から髪色と同じ体毛の猫に化けていた。
色を変えようと試みても、無駄だった。
お義母さんやスネイプ先生に体毛の色を変える魔法をかけてもらっても、効果がなかった。

「きゃ…!」

突然、視界が真っ暗になった。
ローブのフードではなく、人の手の温もりを目元に感じた。
愉快な声が背後から聞こえた。

「やあ、レイブンクローの聖女様!」
「ジョージ…!」
「こりゃ驚いたな。
声でも俺が分かるのかい?」

ジョージは私に目隠しをしていた手をパッと離すと、無邪気に笑った。
談話室に侵入した日以来、ジョージの顔を見ると緊張する。
あの日、ジョージと同じベッドで眠った。
猫の私に掛け布団を掛けてくれたジョージの優しさが、羨ましかった。
猫の自分を羨ましく思うなんて、なんだか変だ。
ハーマイオニーがジョージを睨んだ。

「ジョージ?
図書館では静かにしてくれるかしら?」
「ハーマイオニー嬢は怖いなあ」

ふざけた口調で言ったジョージは、私を見下ろしながら、頭を撫でてくれた。
猫の姿をした私にしたように、丁寧に優しく。
グリフィンドールの談話室でも、こんな風に見下ろされながら、頭を撫でられたのを思い出した。
不意に視線が合うと、逸らせなくなった。
にこやかなジョージの目の奥に、何かを悟っているような光がある気がした。
ハーマイオニーが口を挟んだ。

「アフロディーテに気安く触らないで」
「嫌がってないだろ」
「アフロディーテは猫じゃないのよ?」

ハーマイオニーは杖を取り出しそうな剣幕だ。
私の頭から手を退けたジョージは、笑いながら言った。

「でも、やっぱり似てるよ」

これ以上、ジョージに近付くのは危険かもしれない。



2019.7.7




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