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早朝に目を覚ました時、視界に飛び込んできたのは、ジョージの優しい寝顔だった。
心臓が止まるかと思った。
猛ダッシュでベッドから出て、グリフィンドール塔を後にした。
レイブンクローの自室に戻ってきた私を見たルーナは、不思議そうに言った。

「グリフィンドールの寮に泊まったの?」
「そうなの…いつの間にか寝ちゃったみたい」
「よく眠れた?」
「とても」
「なら良かった」

ルーナは深く詮索しなかった。
ジョージと同じベッドで寝たなんて、話せそうにない。
グリフィンドールの談話室で、私はすっかり油断していたのだ。

今日は土曜日、授業はお休みだ。
ルーナと私はハグリッドの小屋へ遊びにやってきた。
ハグリッドが森の中で飼っている魔法生物を見せてくれると約束してくれたからだ。
私が小屋のドアをノックすると、中から髭もじゃの大きな人が顔を出した。

「こんにちは、ハグリッド」
「来たか、アフロディーテにルーナ。
さあ入った入った!」

私たちはハグリッドが淹れてくれたお茶で一息ついた。
ルーナが黒犬のファングの弛んだ顔をわしわしと撫でている。
幼い頃から猫のアニメーガスだった私には、身体に猫の本能が染み付いている。
犬のファングと初めて逢った当時は、本能的に恐怖を覚えた。
慣れてしまえば、ファングも可愛いものだ。
垂れ目で此方を見てくるから、私も頭をよしよしと撫でてあげた。

「ところで、アフロディーテ。
ハリーは如何だ?」
「大人しいものよ」
「グリフィンドールの談話室に何回入った?」
「まだ一回だけ」

ジョージと一緒のベッドで丸くなって寝た、あの日だ。
ハグリッドは私をアニメーガスだと知る一人だ。
他にもホグワーツの先生方全員とフィルチさんも知っている。

「去年のハリーはやんちゃだったからな。
今年こそ、大人しくしてもらわねえとな」
「出来る限り見守るね」
「お前さんとハリーは寮が違うし、無理はせんでくれよ」

私は笑顔で頷いた。
無理をすれば、スネイプ先生から雷が落ちる。

「くれぐれもアニメーガスだって気付かれるんじゃねえぞ?」
「気を付けるね」
「ルーナには、あっという間に気付かれたみてえだけどな」
「一目見ただけで、なんとなく分かったンだ。
あの時は周りも暗かったけど、なんとなくアフロディーテだって分かったンだよ」

彼も同じように思っているかもしれない。

―――アフロディーテ。

彼、ジョージ・ウィーズリーは猫の私にそう呼びかけた。
もしかしたら、気付かれているかもしれない。
ハグリッドは自分の両膝をポンと叩いてから立ち上がった。

「そろそろヒッポグリフのバックビークを見せてやろうじゃねえか!」
「楽しみ」
「やったね、ルーナ!」

私たちは小屋から出て、森に入った。
ヒッポグリフは誇り高い魔法生物だから、礼儀作法には気を付けないと。
ジョージの事を頭から振り払う為に、私はバックビークとの交流を楽しもうと努めた。



2019.6.17




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