6-1

今朝、アフロディーテにフードを被せるという悪戯をした。
あの子には、噛む噛むキャンディや糞爆弾といった痛い目に遭わせるタイプの悪戯は出来ない。
その結果が、あの原始的で捻りのない悪戯だ。
とても驚いてくれたから嬉しかったし、少し拗ねたような表情が可愛らしかった。

「俺の方が顔つきが優しいんだってさ」
「何回言うんだよ、それ。
耳にタコが出来そうだ」

本日最後の授業だった魔法史の後、談話室へ戻りながら、フレッドが指で耳栓をした。
アフロディーテと話した今朝から、俺はふとした時に頬が緩むのを止められない。
フレッドが呆れた様子で言った。

「すっかりアフロディーテに夢中だな」
「夢中…!?
俺がアフロディーテに、夢中?!」
「夢中以外の何でもないだろ」

確かに、アフロディーテと話せるようになって以来、ひょんな時にもあの子の事を考えている。
大広間でも真っ先にあの子の姿を探すし、教室を移動していても目が勝手に探している。
でも、話すといっても軽く挨拶程度だ。
フレッドはさり気なく言った。

「夢中なのはいいけどさ、アフロディーテは絶対競争率高いぜ?」

つまり、ボーイフレンドの権利争奪戦だ。
ボーイフレンドになりたいだなんて、大それた事は望まない。
俺はまだアフロディーテの事をよく知らないし、アフロディーテだって俺をよく知らない。

「アフロディーテと俺たちとの間には、まだ見えない壁がある気がするんだ」
「実は俺も同じように思ってたぜ」

壁がある≠ニいうより壁を作られている≠謔、な気がする。
誰かがあの子の心に寄り添おうとしても、彼女は一歩下がってしまうような気がする。
俺とあの子の距離は以前よりも確実に近付いている筈なのに、遠いままだ。
もっと近付きたい。





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