5

―――ところで、猫ちゃんは?

あの時、ドキリとした。
その猫ちゃんは、私なのだから。

―――あたしのお友達の猫だよ。
―――いつも急に現れるよね。

あの時のルーナは双子に上手く誤魔化してくれたし、私も自然に話せていたと思う。
同室のルーナにアニメーガスであると白状したのは、結果的に良かったのだ。


―――――
お義母さんへ

お元気ですか?
私は楽しく過ごしています。
授業は面白いものばかりですが、特に魔法薬学は厳しくて驚いています。
身体に気を付けて、仕事もほどほどにね。

あなたの娘より
―――――

宛先は義母だ。
両親を失くした私は、二歳で孤児となった。
そんな私を引き取って育ててくれたのが、母の妹、つまり義母だ。

最悪の場合に備えて、手紙の内容は味気ない。
自分の名前さえ伏せてしまう。
元闇祓いである義母は、グリンゴッツ魔法銀行で働くバリバリのキャリアウーマンだ。
出張が多くて、煙突飛行ネットワークの暖炉で様々な地名を口にしているそうだ。

私はふくろう小屋を訪ねると、元気そうな一匹を選んだ。
黒に近い茶色の体毛を持つその子に、バタークッキーを食べさせてから、手紙を咥えてもらった。
頭をよしよしすると、耳たぶを柔らかく噛まれた。
擽ったくて、声に出して笑った。
ふわっと飛び立ったふくろうの姿を見送り、私は大広間へ向かった。


ふわあ、とだらしない欠伸が出た。
大広間でルーナと朝食を食べている私は、蜂蜜トーストに手を伸ばした。
分厚くて香ばしくて、厨房の屋敷しもべ妖精たちに感謝した。

「眠たい?」
「うん、少しだけ」

昨夜は寮を夜な夜な不在にしていた訳ではなく、普通に宿題をしていた。
気付けば遅い時間になっていて、同室のルーナは先に眠っていた。

「アフロディーテは頭が良いから、無理して勉強しなくても大丈夫だよ」
「そうかな?」
「うん、レイブンクローっぽいもン」

レイブンクローっぽい、か。
私がかぼちゃジュースに手を伸ばした時、突然視界が真っ暗になった。
ビクッと肩を揺らしたら、背後から笑い声が聞こえた。
ローブのフードを被せられていると気付き、慌てて脱いだ。
目をぱちくりさせながら振り向くと、先日逢ったばかりの双子の一人が立っていた。

「おはよう、アフロディーテ!」
「おはよう、ジョージ。
もう…びっくりするでしょ?」
「残念、俺はフレッドの方さ」

私は再び目をぱちくりさせた。
双子のもう一人が大広間に遅れて入ってくるのが見えた。
私は改めて二人の顔を確認した。

「あなたはジョージよね?」
「へえ…如何して分かったんだい?」
「ジョージの方が顔つきが優しいの」

ジョージの頬が瞬く間に赤らんだ。
あたしには同じにしか見えないよ、と隣のルーナが呟いた。

「そっか…俺の方が顔つきが優しいんだ…」
「ジョージ?」
「あ、いや、何でもないさ!
後ろに座ってもいいかい?」
「是非」

レイブンクローの長テーブルはグリフィンドールの隣だから、背中合わせで座れる。
ジョージの次に、フレッドが挨拶に来た。
二人はとても似ているけど、何処か違う。
きっと、他にも相違点があるんだろうな。



2019.6.3




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