ショッピング

国光は勉強を教えてくれるし、あたしの心を支えてくれる。
そんな国光に、あたしは何かお礼がしたいと普段から思っている。
だから休日のテニススクール前に、買い物に出掛けようと思った。
華代に電話でその事を話すと、一緒に行きたいと言ってくれた。
テニススクールがあるから取れる時間は少ないけど、華代に逢えるのはとても嬉しい。

土曜日の午前中、あたしは華代を桃城宅まで迎えに行った。
バスにのんびり揺られながら、大型ショッピングセンター前まで来た。
バスを降りる時、段差があった。

『段差が二段あるよ。』

「うん。」

華代はあたしの腕に手を添えながら、まるで見えているかのようにサクサクと降りてみせた。

「今日はどんな変装なの?」

『お気に入りのキャスケット帽と伊達眼鏡だよ。』

盲目の華代の為に、あたしは外の景色を細かく説明した。
華代が興味を持つからだ。
周りにどんなお店があるのか、空は何色かとか。

『あんまり時間がなくてごめんね。

帰りは送れないけど、本当に大丈夫?』

「大丈夫だよ。」

華代は特別支援学校の2年生になってから、一人で外を出歩く訓練をした。
家族を始めとして、あたしもその訓練に付き添った事がある。
一人でバスに乗れるようになったと聞いた時は凄く感動した。
そうして華代と何度も出掛けたあたしは、華代を誘導する要領を理解しているつもりだ。
盲目の人の必須アイテムである白杖を手に持つ華代は、あたしに誘導されている間はそれを使わない。
あたしの誘導を信用してくれているんだ。
ショッピングセンターの自動ドアを潜り、暖房の効いている中に入った。

『もうすぐクリスマスだから、ショッピングセンターも飾り付けでキラキラしてる。』

「クリスマスプレゼントは決まった?」

『登山関係の何かにしようと思ってるよ。』

今日は国光へのお礼も兼ねたクリスマスプレゼントを選びに来た。
このショッピングセンターには登山道具を売っている専門店があって、国光と一緒に来た事がある。
去年は其処でLEDライト付きのコンパスを買って、国光の誕生日にプレゼントした。
あたしはエレベーターのボタンを押した。

『目星はつけてあるの。』

「選ぶのが楽しみだね。」

『うん!』

国光が喜ぶ顔を想像しながら、買い物をするのが好きだ。
今日もにこにこしながら買い物をした。
国光のお陰でやたらと詳しくなった登山グッズに関して華代に熱弁したら、楽しそうに聞いてくれた。
お喋りが好きなあたしと、聞き上手な華代。
あたしたちはやっぱり親友だ。





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