ショッピング-2

買い物を終えた帰りに、華代をバス停まで見送りに来た。
時刻表を確認すると、5分もすればバスが到着するようだ。
あたしはこのバス停の近くから出ているスクールバスに乗るつもりだ。
今日はいい買い物が出来た。
プレゼントの入った紙袋を見ると、自然と笑みが零れる。

「ねえ、愛。」

『何?』

隣同士でベンチに腰を下ろしていると、華代が真剣な表情をした。
あたしは小首を傾げた。

「考えてる事があるの。」

『うん。』

「まだ誰にも話してないんだけどね。」

何時もほんわかと微笑んでいる華代の表情が、とても真剣だ。
あたしも真面目に聞こうと思った。

「私…愛と同じ高校に行きたい。」

びっくりして、言葉を失った。
盲目の華代の為に相槌を打つようにしているけど、今回はすっぽ抜けてしまった。
華代は説明を始めた。

「支援学校の先生に相談したら、盲目の子でも普通科の高校に入れるんだって。

サポートの先生が付いてくれて、大体の授業は皆と一緒に受けられるんだって。」

そうなんだ、知らなかった。
華代は不安そうな顔をした。

「とりあえず最初の一年間だけでも、青学に通いたいの。

周りに迷惑かけちゃうかな…。」

『あたしがサポートする!』

華代には見えていないのに、あたしは拳をグッと握ってみせた。
この気合いの入ったオーラを伝えたい。

『公欠が多いけど、出来る限り力を貸すから!』

気合いを全身から放っていた時、バスが到着した。
あたしは華代に手を貸し、一緒に立ち上がった。

『華代と一緒なら本当に嬉しいな。』

「そう言って貰えたら、家族にも話す勇気が出た。」

華代はバスの段差を器用に上がり、ICカードを通してから、あたしに振り向いた。
見えていない筈なのに、ちゃんとあたしのいる方向に手を振った。

「ありがとう、楽しかったよ。」

『此方こそ。』

「またね。」

『うん、またね。』

扉が閉まり、バスが発進した。
そのバスを見送った後、思わず一人でふふっと笑った。
盲目になった当時、華代はとても落ち込んでいた。
でも、徐々に本来の笑顔を取り戻している。
あたしと同じ高校に行きたいと言ってくれた。
スクールバスに乗り込みながら、鼻歌を口ずさみそうになった。



2018.7.14




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