自習カフェ

今日はとても大切な日だ。
期末テスト前だけど、国光と逢う約束をしている。
そして、とっても楽しみにしていたゲームソフトの販売日だ。
ばっちり予約済みだと国光に話すと、その日は偶然予定が空いているから一緒に行こうと言われた。
まさか、今日に限って自習専門のカフェとやらに誘われるとは。

あたしたち七人は午前9時に現地集合の約束をした。
変装が欠かせないあたしは伊達眼鏡にキャスケット帽を目深に被り、暖かい格好をして出掛けた。
迷子にならず、無事に自習カフェに到着した。
ウッド調で広々としたカフェは落ち着きがあって、木の良い匂いがした。
個別スペースには仕切りがあるし、一人でも気軽に立ち寄って作業出来そうだ。
暖房が適度に効いていて、長居し易い環境が整っている。
大きなテーブルの予約席に着いたあたしたちは、早速勉強の準備を始めた。
豊富なメニューの中から頼んだコーヒーや紅茶が届いたっていうのに、越前君が来ない。
朋ちゃんが気を落としながら言った。

「リョーマ様…もしかして来てくれないのかな。」

『寝坊かもね。

電話しようか?』

あたしがスマホを取り出した時、自動ドアから越前君が入ってきた。
私服の越前君を見た朋ちゃんは頬を赤らめながら目を輝かせた。
越前君は端的に挨拶した。

「ういっス。」

『おはよう。』

午前9時集合なのに、越前君は30分遅れて到着した。
寧ろ、来た事の方が驚いた。
もしかしたら忘れているかもと思っていたくらいだ。

「リョーマ様!」

「朋ちゃん、声が大きいよ…!」

桜乃ちゃんが朋ちゃんを落ち着かせようと慌てふためいた。
自習カフェは予想以上に静かで、周りの席には勉強している学生や仕事をしている社会人が沢山いる。
今日は教え合いが難しそうだ。
堀尾君が気怠そうな顔をした。

「ちぇっ、不二に教えて貰おうと思ってたのにな。」

『残念。』

あたしは伊達眼鏡とキャスケット帽をそのままに、そそくさと勉強を始めた。
皆には11時まで勉強会に参加すると話してある。
それまでにテスト範囲の内容を頭に叩き込もう。





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