自習カフェ-2

必死に勉強を始めてから2時間。
腕時計を確認したあたしはミルクティーを飲み干し、勉強道具を片付け始めた。
あたしが帰る時間だと気付いた六人が顔を上げた。

『ごめんね、先に帰るね。』

「来てくれてありがとね、愛。」

『いいんだよ。』

昨日、あたしがデートの予定があると話した時、朋ちゃんは自習カフェを勝手に予約したのを申し訳なさそうにしていた。
デートの前に二時間だけでも参加すると話したら、嬉しそうにしてくれた。
失恋した朋ちゃんを哀しませたくなくて、今日は参加した。
結果的に、勉強も出来たし良かったと思う。

「ねえ、不二さん。

もしかしてあの人って手塚先輩じゃないかな?」

水野君の台詞で、あたしはカフェの窓の外に顔を向けた。
国光とは駅前の時計台で待ち合わせの筈だけど、確かに窓ガラスの向こう側にその姿があった。
好きな人の姿に舞い上がったあたしは立ち上がり、空のマグカップを肘で転かしてしまった。
おまけに椅子の足に躓き、危うく転びそうになった。
それを見た国光は驚いたらしく、店内に入ってきた。

「大丈夫か。」

『う、うん…びっくりさせてごめんね。』

マグカップの中は空だったし、床に落として割った訳でもなかった。
国光はあたしの転倒には過敏で、普段から目眩を心配している。
3年トリオが直立し、国光に頭を下げた。
お久し振りです!とハモった三人に、あたしは小さく笑った。
何かと揃うから、トリオって言われるんだよね。
それよりも、場を弁えて静かにしようね。

「ご無沙汰っス、センパイ。」

「久し振りだな、越前。」

国光と越前君が視線を合わせた。
越前君の生意気オーラは国光の前でも健在だけど、睨み合うよりマシだ。

「愛を何かと困らせているようだが。」

「……。」

国光から図星を突かれ、越前君は視線を泳がせた後にあたしの目を見た。
そうです、その通りですとも!
君の事は殆ど全て国光に筒抜けですとも!
桜乃ちゃんと朋ちゃんが国光に頭を下げ、挨拶した。

「手塚先輩、お久し振りです。」

「こんにちはー!」

「愛が世話になっている。」

越前君の視線を軽くスルーしたあたしは、手短に片付けを済ませると、ショルダーバッグを肩に掛けた。
失恋したばかりの朋ちゃんに、国光と二人で一緒にいるのを見られるのは気が引ける。
お会計は終わっているから、後はマグカップをカウンターに返すだけだ。

『じゃあ、またね。』

あたしは皆と其々挨拶を交わしてから、国光と並んでカフェを後にした。
いざ、ゲームゲットの旅へ!



2018.6.6




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