白霊山編:心配

毒煙の充満した村から遠ざかっても、りんは私の羽織をずっと着ていたそうだ。
橋の上で睡骨さまに襲われた時も、私の名を呼んだという。

―――花怜さま、助けて…!

りんは白霊山から戻った私にべったりで、夜になっても離れようとしない。
阿吽に背中を預けながら、私に肩から凭れて眠っている。
岩肌に灯る焚き火の揺らめきを見つめながら、私はりんの頭を撫でていた。
りんには桔梗さまが奈落に殺された事を話していない。
私は桔梗さまの死を信じきれずにいるのだ。
もしかしたら生きているかもしれないという淡い期待が、胸に残っている。
邪見さまは私が村で作った握り飯を頬張りながら言った。

「りんの奴、花怜から離れようとせんな。
余程恋しかったのだろう。」
『…申し訳ない事をしました。』
「お前は七人隊にはめられたのだ。
今回は仕方あるまい。」

もしりんが殺されていたら、仕方ないでは済まなかった。
邪見さまは木の陰に腰を下ろしている殺生丸さまをちらりと伺った。

「花怜、殺生丸さまの元へ行かんのか?」
『りんの傍にいます。』
「ええい、りんなら任せろ。
殺生丸さまの元へ行って来んか!」

邪見さまはりんの着物の裾を引っ張り、寝返りを打たせた。
熟睡しているりんが邪見さまに体重をかけ、邪見さまは背中から潰された。
私が焦っていると、邪見さまはのっそりと起き上がった。

「早う行かんか!」
『あ、はい…。
それではお言葉に甘えます。』

りんの傍にいてあげた方がいいと思っていたけれど、私は殺生丸さまと話したかった。
邪見さまの気遣いがありがたい。
私は阿吽の背中をひと撫でしてから、殺生丸さまの元へと歩いた。
殺生丸さまはそれを見計らっていたかのように立ち上がり、私に右手を差し出した。
私はその手をそっと握り、殺生丸さまについて行った。





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