白霊山編:居場所

花怜は犬夜叉やその連れを友人として慕っている。
奈落を追う私は、そやつらに用があった。
かごめという女を殺そうとしていた人間の男の片腕を、爪で引き裂き落とした。
酷い顔立ちを顔をしていた男は、己で調合したらしい毒を片腕だけで私に放ったが、私には効かなかった。

「この殺生丸に人間ごときの毒が効くか。」

闘鬼剣に頭から斬られた男は、骨と四魂のかけらを残して消え失せた。
その時、犬夜叉が女を呼ぶ声がした。
私と女の立ち位置を見た犬夜叉は、私の前に立ち塞がった。

「殺生丸、てめえ…。
如何して此処にいる!
かごめたちに何しやがった!」
「違うの…犬夜叉…。
殺生丸は…私たちを助けて…。」

犬夜叉の連れは毒が回っているらしい。
助けた、だと?
勘違いも甚だしい。

「助けた訳ではない。
そいつは、話の邪魔だから片付けた。」

それだけだ。
花怜の哀しむ顔を見たくなかったとはいえ、犬夜叉が目を離した連れを助ける筋合いなどない。

「貴様らがこの地にいるのは、奈落を追っての事か?」
「何…?」
「答えろ、犬夜叉。
奈落は何処だ。」
「俺たちも見つけ出した訳じゃねえ。」

犬夜叉は話し始めた。
奈落の邪気が丑寅の方角へ向かったらしい。
追っていれば、奈落の息がかかった連中が襲って来る。
間違いなく奈落は近い――

「それだけ聞けば充分だ。」

私は踵を返し、歩き出した。
背後から子狐妖怪の情けない声が聞こえた。

「犬夜叉…みんなが…毒にやられたんじゃ!」

人間というのは、か弱い生き物だ。
あの程度の毒に侵されただけで倒れ、時には死に至る。

「殺生丸!」

犬夜叉が焦燥を隠さずに追って来た。
私は立ち止まったが、振り向きはしなかった。

「花怜は何処だ!」
「…。」

力を借りるつもりか。
治癒能力に優れる花怜は、解毒など造作もない。
人間ごときの毒なら尚更だ。
犬夜叉は連れを解毒したいのだろう。

「居場所を教えろ!」
「此処にはいない。」
「おい、殺生丸!」

煩い犬夜叉を無視し、私はその場を立ち去った。
私と共に来ずに人里へ向かった花怜が、犬夜叉の元へ行く筈がないのだ。



2018.10.2




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