白霊山編:存在

奈落の息がかかった連中がいると殺生丸さまから聞いていたが、ついにわしらを襲って来た。
やっぱり花怜の存在は大事だ。
何故、こういう時に限って傍にいないのだろうか。

妙な刀を振り回す人間を迎え撃つ殺生丸さまの邪魔になると思ったわしは、りんを連れて橋の上に逃げ出した。
しかし、待ち伏せされていたのだ。
ぐらぐらと揺れる橋の上で、男がわしとりんに向かって三本の鉤爪を振り回した。

「逃げるんじゃねえ!」

りんに何かあったら、わしが殺生丸さまに殺される!
花怜も巫女らしからぬ馬鹿力で殴りつけてくるかもしれん…!

「花怜さま、助けて…!」

花怜の羽織を着ているりんが、此処にいない花怜に救いを求めた。
嗚呼、花怜がたった今傍にいてくれたら、どれ程ありがたいか。
妙な刀を振り回す人間は、馬鹿にしたように言った。

「あの女なら今頃くたばってるぜ!」

その台詞を聞いた瞬間、殺生丸さまから明らかに殺意が湧き上がった。
わしは不意に違和感を覚えた。
まさか、花怜はあやつらの目論見で殺生丸さまから引き離されたのではないか――?
殺生丸さまと花怜が二人揃っていれば、あやつらも安易に手を出せない。
しかし片方だけになると、りんやわしが人質に取られかねない。
わしは鉤爪の男に人頭杖の翁の顔を向けた。

「人頭杖!」

わしも妖怪、やる時はやるのだ。
殺生丸さまと花怜に助けて貰ってばかりではないのだ!
翁の口から業火を放ち、鉤爪の男は消し飛んだかに思えた。
わしが笑っていると、別の問題が発生した。

「って、邪見さま、橋が落ちちゃう!」
「分かっとる、走れ!」

消し飛んだ筈の鉤爪が足場を突き破った。
奴は橋の足場にしがみつき、生きていたのだ。
そして、わしとりんは道連れにされる形で橋から転落したのだ。





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