雨宿り

気持ちが伝わり合って以来、殺生丸さまと私の関係は変わった。
殺生丸さまの傍にいる間は妖気を隠す事なく、基本的に人間の振りをしなくなった。
歩いて移動する時は、殺生丸さまと隣同士で歩くようになった。
邪見さまたちを留守番させて、二人だけで出掛けるようにもなった。
夜は朝まで一緒に寄り添い合いながら眠るし、時々口付けを交わす。
毎日を幸せに感じていたけれど、殺生丸さまには奈落を殺すという目的がある。
私にも奈落の手が及ぶかもしれない状況の中、気を緩めてはいけない。


深夜の洞窟で雨宿りをしている私たちは、焚き火を囲んでいた。
雨脚は強まる一方で、少し身体が冷える。
りんは私の羽織を着て、私の膝に頭を乗せていた。
雷雲と豪雨の不気味な音が怖いのか、私の片手を握って離そうとしない。

「花怜さま…怖いよ…。」
『大丈夫、傍にいるよ。』

殺生丸さまは岩壁に背中を預け、じっと外を見つめている。
邪見さまも実は怖がっているのか、阿吽にくっついている。
私はりんの頭を何度もゆっくりと撫でていたけれど、不意にりんの耳を塞ぐように手を当てた。
すると、りんが微睡んだ。

「あれ…なんだか落ち着く…。」
『おやすみ。』

軽い催眠状態に誘う事で、りんを眠らせた。
殺生丸さまが静かに口を開いた。

「眠らせたのか。」
『はい。』

その時、外が一瞬明るくなったかと思うと、雷鳴が轟いた。
遠くない場所に落雷したようだ。
邪見さまがぎゃーと叫んだけれど、りんは何事もなかったかのように穏やかな表情で眠っている。

私はりんに片手を握られたまま、殺生丸さまの横顔を見つめた。
今夜は二人で寄り添って眠れなさそうだ。
気持ちが伝わり合って以来ずっと、夜は邪見さまたちから離れて、二人だけで過ごしてきた。
寂しさを感じるけれど、私はりんを守りたい。

「花怜。」
『はい。』
「また明日だ。」

何を伝えたいのか、理解してくれたようだ。
邪見さまと阿吽は首を傾げていた。





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