能力

花怜は私の前で人間の振りをしなくなり、妖気を隠さなくなった。
それ以来、花怜の妖怪としての能力を改めて知る事となった。

雲が太陽を遮る昼間。
私たちは野原で休憩を挟んでいた。
花怜たちは草の上に、私は木の根元に腰を下ろしていた。
その時、小柄な鬼の妖怪――餓鬼が土の中から現れた。
普通の人間には見えない妖怪だ。
りんは花怜から貰った焼き餅を頬張っていて、何も気付かない。
しかし、花怜と邪見はりんの背後に現れた餓鬼に目をやった。

「花怜…あ、あれは…。」

邪見が救いを求める目で花怜を見た。
花怜は焼き餅に夢中なりんに優しく言った。

『りん、こっちにおいで。』
「え?」
『いいから、おいで。』

花怜は腕を広げた。
りんは大人しく立ち上がり、花怜の隣に寄り添うように腰を下ろした。
餓鬼がりんに取り憑こうと走り寄って来た時、花怜は手で払うように妖力で滅した。
蒸発するかのように消え失せた餓鬼を見て、邪見はほっと一息吐いた。

「ふう、ただの餓鬼じゃったか。」
「りんはガキじゃないもん!」
「阿呆、そのガキと違うわい。」
『餓鬼という名の妖怪がいたんだよ。』

花怜は自らの妖気で他の妖気を滅する力を持っていた。
その妖気で具現化した矢は、瘴気や邪気などを瞬く間に滅する。
まるで霊気のような力を持っているのだ。
躓いたりんの怪我を妖気で治療していたのも目の当たりにした事がある。

私は餓鬼を滅した花怜と不意に視線が合った。
花怜は頬を紅く染め、私に微笑んでから視線を逸らした。
愛らしい反応をするものだ。
私は一人でふと口角を上げ、空を見上げた。



2018.6.16




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