自信 後編

鎧を身に纏い、腰に刀と剣を携えた。
花怜も袴の結びを締め、身なりを整えた。
見晴らしの良い野原で、夜が明けるまでその身体を抱いていた。
もう既に幾度か花怜を抱いたが、相変わらず感度の良い身体をしている。
二人で視線を合わせると、花怜が微笑んだ。

「行くぞ。」
『はい。』

その身体を抱き締めるように引き寄せ、宙に浮き上がった。
花怜は下に広がる景色を眺めた。

『こんなに景色の美しい場所だったんですね。』
「思い詰めていたから気付かなかったのだろう。」
『……。』

花怜は黙り込み、私の首に抱き着いた。
私がその耳元に唇を寄せると、花怜は小さく笑った。

―――私だけを見ていてください。

昨夜の花怜は泣きそうな表情をしていた。
犬夜叉の連れに何を吹き込まれたか知らないが、不安になったようだ。
何度も愛を囁きながら、肌を重ねた。
花怜の不安を自信に変える為に、今後も愛を注いでやろう。

『あ、見えましたよ。』

邪見とりんが阿吽を連れ、森の片隅で私たちを待っている。
焚き火は消してあったが、微かに煙の匂いがした。
二人は私たちの姿を見つけると、大袈裟に手を振った。

「花怜さまー!」
「殺生丸さまー!」

私たちが地に足を着けると、二人は騒々しく駆け寄って来た。

「お待ちしておりましたぞ、殺生丸さま!」
「遅かったね!」
『ごめんね。』

花怜は荷物の袋から竹の葉に包まれた焼き餅を取り出し、りんに渡した。
以前、花怜が米を食べたいと言っていたのは本心のようだ。
普段から果物や野菜よりも、米を好んで食べている。

「ありがとう、朝ごはんだ!
花怜さまは?」
『私はいいかな。』
「ちゃんと食べないと駄目だよー。」
『実は胃もたれが…。』

花怜が苦笑すると、焼き餅狙いの邪見が花怜に近寄りながら毒づいた。

「妖怪の癖に胃もたれとは情けない。」
『我ながらそう思います。
私の分は邪見さまに。』
「仕方なく貰ってやろう。」

花怜は阿吽にも焼き餅を一つずつ食べさせた。
自分は本当に食べないようだ。
りんが焼き餅を頬張りながら訊ねた。

「花怜さまも殺生丸さまも遅かったけど、どうかしたの?」
『…えっ。』

花怜は頬を紅く染めた。
その反応を見た邪見が、私と花怜を忙しなく交互に見た。

「ま、まままさか花怜…もしや殺生丸さまと…。」

邪見は気付いていなかったのだろうか。
随分と前からだというのに。
花怜の結界はそれだけ優秀なようだ。
花怜は俯き、腹を抱えた。

『胃が…!』
「花怜さま大丈夫?!」

仕方あるまい。
救いの手を差し伸べてやろう。
私は一人で先に歩き始めた。

「行くぞ。」
「お待ちくださいませ殺生丸さま!」

花怜は例の話題から外れ、安心して隣に駆け寄って来た。
りんも阿吽を連れ、私たちは歩き始めた。
花怜の横顔を一瞥してみる。
これ程まで端整な顔立ちをしておきながら、自分を卑下するとは。
花怜の腕を掴んで傍に引き寄せ、もう少し近くで歩くようにと催促した。
驚いた様子の花怜だったが、頬をほんのりと紅く染め、大人しく私の傍を歩いた。



2018.8.28




page 1/1

[ backtop ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -