末路
「花怜さまの父さまと母さまは何してるの?」
りんが何となしに訊ねたこの内容は、私に思い出したくないものを思い出させた。
薬草を摘む手を止め、不自然にならないように努めて微笑んだ。
『いないよ。』
「なんで?」
りんの御両親と兄弟はりんの目の前で野党に殺された。
それはりんの心に深い傷を残し、一時期は声を失った。
遠巻きに殺生丸さまが私を見つめているし、傍にいた邪見さまも興味深そうに私の話を聞いている。
『一族の内戦で死んだの。』
「ないせん…?」
『同じ一族なのに、喧嘩したんだよ。』
祝言を挙げた者同士なのに、私の両親は殺し合った。
母上が父上を殺し、母上も重傷を負った。
最期は殺してくれと私に懇願しながら、己の心臓を刀で突き刺して死んだ。
純粋なりんには話せない内容だ。
「ご、ごめんなさい花怜さま…。」
『いいんだよ。
百年以上も昔の事だから、殆ど忘れちゃった。』
嘘をついた。
思い出すと、体内にある妖気と霊気が喧嘩しそうになる。
まるで、内戦で一族同士が争ったように。
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