愛情 中編

四魂のかけらの気配と、覚えのある妖気が近付いて来る。
私はお邪魔しているお屋敷の一室を借り、薬草を使った薬を煎じていた。
陶製のすり鉢に入れた薬草に治癒能力のある霊気を練り込み、すりこ木で潰してゆく。
不意に昨夜と早朝の甘い時間を思い出し、顔が熱くなった。
私は首を左右に振り、集中しようと努めた。
すると、襖に人影が映った。

「巫女さま、宜しいでしょうか。」
『はい。』

お屋敷に仕える使用人の女性が襖を開け、正座をしながら丁寧に頭を下げた。

「巫女さまのお話されていた旅人の方々がお見えになられたようでございます。」
『今行きます。』

自ずから来ると思っていた。
かごめちゃんは四魂のかけらの気配を感知出来る。
襖の先にある廊下から慌ただしい足音が聞こえた。

「間違いねえ、花怜の匂いだ!」
「犬夜叉、落ち着きなさいよ!」

使用人の女性は驚きで飛び上がり、襖から遠退いた。
女性がいた場所に現れたのは、私が待っていた者だ。

「花怜!」
『犬夜叉さま。』
「花怜ちゃん、無事だったのね!」
『かごめちゃん。』

無事とは如何いう意味なのか、私は理解に遅れた。
きっと殺生丸さまと私が刀を交えた事を言っているんだ。
弥勒さまが女性に話しかけている声が、廊下から聞こえた。

「どうか私の子を産んでくだ――」
「法師さま!」

私は面白おかしくて、思わず微笑んだ。

『皆さま、お久し振りです。』





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