愛情 中編-2

煎じた薬をお屋敷の名主さまに渡した私は、皆さまが待っている部屋に入った。
茶のもてなしを受けていた皆さまは、座布団に腰を下ろしていた。
犬夜叉さまだけは庭の見える縁側で胡座をかいていたけれど、私が姿を見せると立ち上がった。

「殺生丸とは如何いう関係だ?」
『唐突ですね。』

乱雑に座り込んだ犬夜叉さまは、座布団に腰を下ろした私を興味深そうに見つめた。
かごめちゃんが眉尻を下げて言った。

「本当に心配したのよ?
花怜ちゃんが殺生丸と闘って、怪我したんじゃないかって…。」

私は微笑み、首を横に振った。
犬夜叉さま一人だけが不機嫌な目をしている。

『殺生丸さまが言った通り、私はあのお方の連れです。』
「なんで黙ってた!」
『殺生丸さまはあなたをいずれ殺すと言っています。
そんなお方の連れだと言えば、あなたは警戒するでしょう。』
「当たり前だ!」
『私は兄弟同士で仲違いをして欲しくありません。』

犬夜叉さまは目を丸くした。
弥勒さまが説得するかのように言った。

「花怜さまが殺生丸の刺客だとは思えません。
それに、花怜さまはお前を庇ったんです。
お前もずっと花怜さまを心配していたでしょう。」

犬夜叉さまは僅かに頬を染め、弥勒さまに反論しなかった。
心配してくれていたんだと思うと、嬉しかった。

『皆さまに初めてお逢いした時、あれは本当に偶然だったんです。
殺生丸さまが打たせたという闘鬼神の存在も知りませんでした。』

信じて欲しい。
嘘は言っていない。
かごめちゃんが犬夜叉さまに言った。

「犬夜叉、信じてあげようよ。」
「…仕方ねえな。」

私は微笑んだ。
犬夜叉さまはそっぽを向きながらも、納得してくれたようだ。
すると、珊瑚ちゃんが不思議そうに訊ねた。

「それにしても、なんで殺生丸と一緒にいるの?
殺生丸は花怜ちゃんが犬夜叉と一緒にいるのを嫌がってた。」
「それに花怜ちゃんを抱き寄せてたわよね。」

顔が熱くなった。
あからさまに反応してしまい、女の子二人に身を乗り出された。
かごめちゃんが興味津々の様子で訊ねた。

「もしかして付き合ってるの?」
『えっと…。』
「けっ、お前ら出来てんだろ。」

口を挟んだ犬夜叉さまが、私を横目で見た。
私は冷や汗をかいた。
何故、分かったのだろうか。

「お前から殺生丸の匂いがぷんぷんしやがる。」

昨夜、殺生丸さまに純潔を捧げた。
早朝にも肌を重ねて、朝まで寄り添って眠った。
私の装束に殺生丸さまの匂いがついているんだ。
皆さまからの好奇の目を如何にかしたいと思った私は、本来の目的を思い出した。

『そういえば…!
今日は皆さまにこれを渡したくて、待っていました。』

柄と共に袴の隙間に片付けていた四魂のかけらを手に取り、それをかごめちゃんに差し出した。

『今朝、見つけたんです。
集めているんですよね?』
「そうだけど、いいの?」
『私は不要ですから。』

かごめちゃんは受け取ってくれた。
よし、これで目的は達成した。
私は素早く立ち上がった。

『私はこれで…。』
「ちょっと待って花怜ちゃん。」
「そうだよ、話聞かせてよ。」

女の子二人が目を輝かせている。
私はひたすら困惑した。



2018.7.15




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