偽物

奈落は花怜が私の傍にいないのを見計らい、りんを誘拐した。
奴は蒼の巫女と呼ばれる花怜の存在を知り、恐れているのだろう。
花怜には奈落を滅する程の力がある。
そんな時、食糧を取りに向かったりんが、野原で休憩を取っていた私の元へ泣きながら走って来た。

「花怜さまが拐われたの!」

花怜が拐われた――?
りんに遅れて走って来た邪見が、息切れを起こしながら言った。

「さっき奈落の分身の女が来て――」
「花怜さまを連れ去ったって言ったの!」

微かに感じていた、奈落の匂い。
しかし、花怜の匂いはしない。
花怜は三日前に人里へ向かったのだ。
私は暫し考え込んだ後、無言で歩き始めた。

「殺生丸さま、何処へ行かれるので?!」
「花怜さまを助けに行くに決まってるよ!」

あの花怜が私以外の前で隙を見せるとは思えない。
真相はこの目で確かめる。
花怜が拐われたという話が私をおびき寄せる為の嘘だったとしても、花怜の存在を利用されるのは気に喰わない。





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