期待

花怜が妖怪だった。
しかし、それを知ったわしはあまり驚かなかった。
前々から花怜を人間らしくないと思っていたからだ。

「痛いです殺生丸さま…。」

たんこぶだらけのわしは、阿吽の背中でうつ伏せになりながら唸った。
殺生丸さまを先頭に、りんの元へ向かって空中を移動している最中だ。
先程、待ち惚けに痺れを切らしたわしは殺生丸さまの様子を伺いに行った。
其処ではなんと、殺生丸さまが花怜と寄り添い合っていたのだ。
わしに気付いた花怜は慌てて離れようとしていたが、殺生丸さまに手を取られて引き留められていた。
その直後、わしは殺生丸さまにぼこぼこにされた。
つまり、邪魔をしてしまったのだ。

『邪見さまが痛がっていますよ。』
「知らん。」

花怜は殺生丸さまの右腕に腰を引き寄せられている。
殺生丸さまはわしをぼこぼこに殴った後、花怜に有無を言わさず、その身体を引き寄せて空に飛び上がったのだ。
二人が並んでいるのを見てみると、確かにお似合いである。

殺生丸さまは間違いなく花怜に惹かれている。
嗚呼、くっついちゃうのか?
もしや、もうくっついているのではないか?

「くっついちゃうんだろうなー…。」
『邪見さま?』
「な、何でもないわい!」

わしの表情を伺った花怜は、殺生丸さまに大人しく引き寄せられている。
殺生丸さまの後ろ姿は、なんだか嬉しそうな気がする。

これからどのような毎日が待っているのだろうか。
あの殺生丸さまがどのように変わるのか、かなり楽しみだ。



2018.5.10




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