再々会

待ち侘びた夜明けが訪れた。
犬夜叉さまは変化し、元の姿へと戻ったのだ。
灰刃坊の身体は元の姿の犬夜叉さまと組み合った際、闘鬼神の剣圧に負けて粉々になった。
地表に突き刺さった闘鬼神の柄には、灰刃坊の手だけが不気味に残った――

「こんな重い刀どーやって使うんだ。
ひと振りがやっとじゃねーかよ!」

犬夜叉さまがやたらと重くなった鉄砕牙に関して、刀々斎さまに文句を言っている。
私はその間に霊刀を片付け、闘鬼神に少しだけ近寄った。
普通の人間なら近寄るだけで邪気に負け、身体が持たないだろう。

「剣の邪気が衰えません。」

弥勒さまが私の後ろに続いた。
刀々斎さまが犬夜叉さまをほったらかしにして言った。

「悟心鬼とかいう鬼と、灰刃坊の邪気にまみれた剣。
こんなもん、この世から消し去るしかあるまい。」
「花怜さまは先程この邪気を浄化されていましたが…。」
「ほう。」

刀々斎さまが興味深そうに私の顔を見た。
何を言いたいのか、分かっている。

「頼めるか?」
『はい、浄化します。』

闘鬼神の柄を掴もうと、一歩踏み出した時。
空から懐かしい妖気を感じた。
はっとして空を見上げると、闘鬼神に雷撃が降り注いだ。
闘鬼神に残っていた灰刃坊の手を滅した雷撃は、私に触れる寸前だった。
それでも怖くはなかったのは、雷撃の主が誰なのかを分かっていたからだ。
その場に現れたのは雷撃を放った阿吽と、その背に跨っていた殺生丸さまだ。
ふわりと地表に降りた殺生丸さまは、闘鬼神を挟んで向かい側にいる私を見つめた。
私の目が自然と潤んだ。

殺生丸さま…
逢いたかった――

一歩踏み出して手を伸ばせば、届きそうな距離にいる。
電撃を纏った闘鬼神が私たちの間を隔てていて、近寄れない。
それよりも、何故殺生丸さまが此処に?
私の疑問を犬夜叉さまが口にした。

「な…殺生丸!
なんでてめえが此処に…。」
「それは此方の台詞だ。
私はこの剣を追ってきただけ。
如何やら貴様に殺された鬼は、剣になっても、なお貴様に復讐したかったようだな。」

この剣があの鬼の牙から打たれた事を知っている。
それはつまり――

「灰刃坊に剣を打たせたのはこの私だ…。」

私は目を細めた。
驚きはしなかったけれど、嫌悪感を覚えた訳でもない。
犬夜叉さまとかごめちゃんが叫んだ。

「花怜、そいつから離れろ!」
「花怜ちゃん!」

私は闘鬼神の前から動かなかった。
殺生丸さまが落ち着きのある声で言った。

「花怜。」

胸がトクンと大きく鳴った。
この高鳴りの正体がようやく分かった。
殺生丸さまの隣にいる居心地の良さや、逢えなくて寂しかった理由に、ずっと気付かなかった。
私は何時の間にか――

何も言わずに立ち尽くしている私に痺れを切らしたのか、殺生丸さまが腕を伸ばした。
一瞬で手を掴まれたかと思うと、闘鬼神を擦りそうになりながら引っ張られた。
腰に回された手で抱き寄せられ、間近で見つめ合った。
殺生丸さまの僅かに苛立った声がした。

「何故…犬夜叉とつるんでいる?」



2018.5.2




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