邪気-2

「さあ、かかってきな犬夜叉…。
それとも…腰が抜けて動けねえのか?
女どもと一緒にこそこそ隠れやがって。」

灰刃坊の挑発を受けた犬夜叉さまは、七宝ちゃんの宥める声を無視した。

「元々奴は俺を狙って来たんだ。
俺は逃げも隠れもしねえっ!」
『犬夜叉さま!』

人間の姿の犬夜叉さまでは太刀打ち出来ない。
殺生丸さまと犬夜叉さまとでは性格が全く似ていないと思いながら、私は犬夜叉さまを引き留めようとした。
その時、空から別の妖気を感じて、踏み止まった。
争いに割り込んで中断させたのは、牛の妖怪の背に跨り、一本の刀を携えた刀鍛冶だった。

「やれやれ、何の騒ぎかと思ったら…。」
「刀々斎てめえ遅ーんだよ、よこせっ。」

犬夜叉さまは刀々斎さまらしき刀鍛冶から鉄砕牙を鞘ごと奪い取った。
直して貰ったというのに、態度が大きい。

「久し振りじゃねえか、灰刃坊。」
「まだ生きてやがったか、刀々斎。」
「また酷い剣を鍛えたもんじゃな。
なんだその邪気は。」

灰刃坊は刀々斎さまの不肖の弟子であり、既に破門しているのだという。
その理由は、灰刃坊が一本の刀を造る為に、十人の子供を殺しているからだ。
血と脂を刀に練り込み、怨みの妖力を与えているのだという。
その話を聞いた犬夜叉さまは、鉄砕牙を鞘から抜いた。

「けっ、如何やらてめえには…手加減する必要はないらしいな!」

打ち直された鉄砕牙は強くなっているのか、と七宝ちゃんが刀々斎さまに訊ねた。
珊瑚ちゃんが闘鬼神が何の牙から打たれたのかを説明しても、刀々斎さまは興味がなさそうな顔をしている。
私が眉を寄せて犬夜叉さまの背中を見ていると、刀々斎さまが私に話しかけた。

「其処の別嬪は誰じゃ?」
『え…私ですか?
花怜と申します。』

別嬪だと言われて浮かれる私ではない。
犬夜叉さまを止めなければ。
犬夜叉さまが鉄砕牙で闘鬼神と組み合うと、その身体から血が吹き出した。
かごめちゃんが私の腕に縋った。

「花怜ちゃん、犬夜叉を止めて!」
「手ぇ出すな、花怜!」
『犬夜叉さま…。』

犬夜叉さまは灰刃坊の闘鬼神を弾いて叫んだ。
私は眉を寄せ、空を見上げた。
もうすぐ、夜明けだ。



2018.4.27




page 2/2

[ backtop ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -