再会

あの女との出逢いを思い出していた私は、ふと目を開けた。
今、広々とした花畑で休憩を挟んでいる最中だ。
岩肌に腰を下ろしていた私の耳に、黄色い花に囲まれている邪見の小言が聞こえた。

「殺生丸さまは一体何をお考えなのか…。」

奈落の微かな匂いだけを追い、歩き続ける日々。
連日に渡って収穫が少なく、邪見がそれを不安に思っているのは私も分かっていた。
花摘みをしていたりんが言った。

「殺生丸さまに直接訊いてみたら?」

りんは天生牙によって息を吹き返した人間の小娘だ。
あの後、私と邪見について来た。

「殺生丸さまは口数が少ないお方だ。
特に蒼の巫女の事は何一つ話し───」
「蒼の巫女さま?」

邪見は口を滑らせたと思ったらしく、全身が青ざめた。
蒼の巫女
久方振りにその名を耳にした。
あれ以降、邪見に何を何度問われようと、私はあの女の話を口にはしなかった。
口数が少ないのは自覚がある。

「何じゃ、りん。
何か知っておるのか。」
「うん、ずっと昔にりんと遊んでくれた巫女さまなの!」

りんは話し始めた。
りんの両親が生きていた頃。
旅をしていた女が、りんの村を訪れた。
数日間だけ身を置き、村人の疫病を不思議な通力で治療して去ったという。
女が村を去った日、りんは寂しさで大いに泣き、女や村人を困らせてしまったのだという。

「花怜さま、元気かなあ?」

初めて聞いた、女の名。
花怜というらしい。

「邪見さまは逢った事あるの?
花怜さま、とっても綺麗だよね?」
「確かに美し……んな訳ないわい!」

邪見が顔を赤くしている。
女の容姿を思い出してみる。
僅かに蒼を含んだ瞳、蒼の袴、端整な顔立ち。
しかし、私にはもう関係のない女だ。
今後も逢う事はない。
そう思っていた。





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