再会-2

花畑を後にすると、私たち一行は再び歩き始めた。
森の中を進んでいると、覚えのある匂いがした。
清らかで、柔らかな匂いだ。
まさか、これ程まで近くにいるとは。
辿っている道の先に、その気配がある。
背後を歩く邪見と、阿吽に乗るりんには何も言わなかった。
女が道を外れるかもしれないと思っていたからだ。
邪見は小煩く言うだろうし、りんに無駄な期待をさせるのも面倒だ。
小一時間程経過した時、匂いの主は私の通り道にいた。

「あれっ、もしかして…花怜さま!」
『…りん?』

巫女装束の女は、木々の合間を縫って歩いていた。
竹編みの平たい籠に薬草を積み入れていたが、駆け寄って来たりんに目を丸くした。
籠を地に置いてしゃがむと、抱き着いて来たりんを抱き締め返した。

「花怜さま、りんを覚えてるの?!」
『勿論、覚えてるよ。』

女は私を見つけると、目を細めた。

『あなたは…。』
「むむ、貴様は蒼の巫女!」

人頭杖を振り回して威嚇する邪見だが、女は私の目を見つめていた。
私もまた、女を見つめ返した。
しかし、女はりんの声で視線を逸らした。

「花怜さまは相変わらずとっても綺麗だね!」
『ありがとう。』

女はりんの頭を優しく撫でた。
私の前では見せなかった微笑みを浮かべている。
邪見は無視され、額に青筋を立てていた。

『あのお方と一緒なの?』
「殺生丸さまだよ!」

女は立ち上がり、私と向き合った。
その端整な顔立ちを懐かしく感じる。
りんに片手を繋がれながら、女は頭を下げた。

『花怜と申します。』

名乗られても、私は黙っていた。
真っ直ぐに女を見つめていたが、踵を返した。
一人で歩き始めると、邪見が慌てて追いかけて来た。

「殺生丸さま、お待ち下されー!」

相変わらず小煩い連れだ。
続けてりんの声が聞こえた。

「花怜さま、一緒に行こう?」
『え?』
「花怜さまもこっちに行こうと思ってたんでしょ?
りんたちも同じなの!」

思わず歩みを止めた。
振り返ると、りんに手を引かれている女がいた。
困惑した表情の女を見て、邪見がすかさず反論した。

「何を言っておるんじゃ!
人間の小娘が二人もついて来るなんぞ、殺生丸さまがお許しになられる訳がなかろう!」
「邪見さまのケチ!
心が狭いんだから!」
「何じゃと!」
「邪見さまなんて知らない!」

二人の言い争いを無視し、私は歩き始めた。
邪見が阿吽を連れ、後から追って来る。
更にりんが女の手を引き、ついて来る。
邪見が控えめに訊ねた。

「殺生丸さま、宜しいので…?」
「……。」

あの女に興味がある。
来るなとは言わなかった。



2018.2.15




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