私とりんは水浴びをした後、魚を追っていた。
お互いに素手で捕まえようと試みている。
本来なら霊刀の柄の部分を弓手として弓に使えるから、霊気を具現化した弓矢で魚を獲れる。
けれど、今回は敢えて素手に挑戦していた。
蒼い袴を膝上まで捲り上げ、浅瀬に追い込んだ魚を掴んだ。

「獲れたよ、花怜さま!」
『私も!』

持ち歩いている竹編みの籠に、魚が増えてゆく。
十匹だけ捕まえたら、私は持ち歩いていた小刀で魚を開き始めた。
今日一日乾燥させて、日持ちさせる。
平らな岩肌で魚を着々と開いていると、それをしゃがんで見つめていたりんが言った。

「楽しかったね!」
『うん。』

はしゃいだのは何時以来だろうか。
りんと一緒だからこそ、こんなにも楽しめる。
すると、不意にりんの表情が暗くなった。

「花怜さま、もうすぐ行っちゃうの?」

私は開いた魚を洗っていた手を止め、りんと視線を合わせた。
りんは今にも泣き出しそうで、私まで苦しくなった。

「嫌だよ、寂しいよ。」
『りん…。』
「花怜さまが色んな人たちを助ける力があるのは知ってる。
でも、寂しい。」

こんなにも寂しいと思ってくれていたなんて。

『次に行く人里にも、疫病の噂があるの。
だから――』
「其処が終わったら、一緒に来てくれる?」

私は無言でりんの頭を撫でた。
これ以上、殺生丸さまの手を煩わせる訳にはいかない。
邪見さまも人間の小娘が二人もいるのは面倒だと言い張っている。

『……ごめんね。』

抱き着いてきたりんの背中を撫でた。
ごめんね――
謝る事しか出来なかった。



2018.3.10




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