サソリの最期

過去に己の手で作った父と母の傀儡に胸を貫かれ、俺は身動きが取れなくなった。
その攻撃を見切っていた筈なのに、何故か回避出来なかった。
俺は此処で終わる。
そう確信した。

長く美しく後々まで残っていく、永久の美。
それこそが自分の理想とする芸術だった。
理想を何処までも追求し、挙げ句の果てには自分の身を改造した。
結果的に、人間でも傀儡でもない半端な存在と化した。
芸術に対する見解の相違から、デイダラとは何度も論争になった。
そんな俺に、雅は穏やかに言った。

―――永久≠引き立たせるのは一瞬≠ナあって、またその逆もそうではありませんか?

雅は不思議な女だった。
あの芸術的な顔で、俺に様々な事を訴えかけた。
血塗られた過去を持つ俺が、呆気なく毒気を抜かれる感覚がした。
雅との会話が自然と思い出される。

―――ヒルコさんより本体のサソリさんの方がかっこいいですよ?
―――……うるせえ。

殺し切った筈の感情を思い出すのは、不快ではなかった。
最期だというのに、こんなにも心が清々しいのは何故だろうか。
とても不思議だ。
雪女と呼ばれる雅は透き通っていて、俺の心が温かく溶かされた。

―――私はサソリさんにも生きていて欲しいんです。
―――俺は死なねえ。

悪いな、雅。
お前が死んでも傀儡にしてやらねえと思っていた俺の方が、お前よりも先に逝く。

お前は俺が死んだら泣くだろうか。
泣かれ過ぎるのは御免だが。

少しでも寂しいと思ってくれるだろうか。
俺の言葉を思い出してくれるだろうか。

―――お前は死ぬな。

生きろ、雅。





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