空の旅-2
雅とデイダラの二人は、隠れ家への道を辿る空の旅を始めた。
鳥型粘土の広い背に腰を下ろしている。
デイダラは前方を見ながら、先程の雅の言葉を思い出していた。
―――さようなら。
あの男には相当ショックな言葉だっただろうな。
ざまあねーぜ、うん。
オイラの女に惚れたのが悪い。
「雅」
デイダラは身体を反転させ、雅と向かい合った。
雅の黒衣とデイダラの黒装束が風に揺れている。
「大蛇丸はオイラが殺る」
「デイダラが?」
「あいつは暁の裏切り者だ。
前々から殺そうと思ってたしな、うん」
雅に怪我を負わせた大蛇丸を、この手で殺す。
跡形もなく爆破してやる。
「殺すなら、今がチャンスかもしれません」
「お前が戦ったんなら、大蛇丸もただじゃ済まないだろうしな」
大蛇丸は雅以上に重傷を負ったようだ。
やはり雅一人なら、大蛇丸を始末出来ていただろう。
「探しに行くんですか?」
「そうしたい所だが、ペインの判断だな」
暁という組織に所属している以上は、組織の方針に従って動かなければならない。
しかし、デイダラはペインに大蛇丸捜索を願い出るつもりだ。
「お前も大蛇丸を殺したいか?」
「私は基本的にターゲット以外は殺しません」
そのスタンスは変わらない。
他の忍を狙うよりも、本来のターゲット暗殺に集中したい。
「デイダラは前々から大蛇丸を殺したかったんですね」
「他にも殺したい奴が暁にいる」
「そうですか…」
「どうかしたのか?」
雅が暗い顔をしたのを見て、デイダラは手を伸ばした。
冷んやりとしている頬に触れると、雅は弱々しく微笑んだ。
「私がまだ知らないデイダラがいるんだなと思って」
デイダラは目を丸くした。
お互いにまだ知らない部分が沢山ある。
「オイラももっとお前を知りたい」
「私ももっとデイダラを知りたいです」
「なら、今夜は月見でもしながら二人でのんびり話すか」
「是非」
今夜は満月で天気も良いようだし、お月見日和だ。
「オイラの話なんて大した事ねーぞ?」
「私だってそうですよ」
自分ばかりが相手を知りたいと思っていた訳ではなかった。
頬の緩みが止まらなくなったデイダラは、雅を優しく抱き締めた。
目を閉じた雅も、太陽に見守られながらデイダラを抱き締め返した。
「ところで雅、そろそろその敬語は何とかならねえのか?」
「これは癖で…」
「まあ無理にやめろとは言わねえけどな、うん」
敬語は雅らしさの現れだ。
しかし、恋人である自分だけにでもタメ口で話して欲しいと思うのは自然な事だ。
「デイダラもうん≠ヘやめられないですよね?」
「うん?」
「ほら」
「ああ、これか…うん」
また言ってしまった。
これは確かにやめられなさそうだ。
「可愛くていいと思います」
「可愛いって言うな!」
デイダラが雅の頭に頬擦りで攻撃すると、雅は楽しそうにクスクスと笑った。
二人はこんなに長閑で幸せな気分になるのは久し振りだった。
S級犯罪者同士、空の旅を満喫した。
2018.5.29
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