音信不通の恋人

「不二。」

昼食後、合宿所で同じ部屋割りの不二に声を掛けた。
俺たちは青学のレギュラージャージ姿だ。
テニスコートに向かっていた不二は、愛に似ていないミステリアスな微笑みを浮かべた。

「何かな?」

「朝から愛と連絡が取れないんだが、何か知らないか?」

「え?」

不二が途端に微笑みを消した。
連絡が取れないとなると、不二も心配になるだろう。
特に、あのお転婆でドジな愛の事だ。

「メッセージは既読にもならないし、電話にも出ない。」

「留守電は?」

「留守電にもなっていない。

呼出音が続くだけだ。」

「……第1試合まで数時間しかない筈だけど。」

俺には今から試合がある。
スマートフォンを確認している時間はない。

「僕もさっき激励のメッセージを愛に送ったんだ。

だけど寝ている時間だろうから、すぐに返事がなくても気にしなかったんだ。」

不二は考える素振りを見せると、俺に言った。

「早くから寝ていたのかもしれないよ。

愛は君の電話に出ずに寝落ちる事があるらしいしね。」

何故、知っているのだろうか。
愛が話したのだろう。

「もしかして、何か怒らせたのかい?」

「そんな筈はない。」

メッセージにも普段通りの愉快な顔文字があった。
怒っている様子などなかった。

「とりあえず、夕方になっても連絡がなかったら、ネットで国別対抗戦の結果を見よう。

愛は先発でシングルスに出る筈だから。」

「分かった。」

不二はやはり心配らしく、物憂げな表情で空を見上げた。
同じ空の下にいる愛を思っているのだろう。
俺と不二はこの後、不二の希望によって試合をする事となる。



2017.6.19




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