二人の身長差

部活終わりになると肌寒い季節になった。
約束した通り、愛の家の近所にある何時もの公園に来た。
ペンキ塗りのベンチには既に愛が腰を下ろしていた。
純白のニットのワンピースが似合っている。
よく見ると、何かの紙を一枚持っているようだった。

「愛。」

『国光…。』

愛は立ち上がり、俺に駆け寄ってきた。
その勢いで抱き着いてくるのかと思ったが、俺の目の前で立ち止まった。
そして、手に持っていた紙を俺に向かって突き出すように広げた。

『見てよ、これ…!』

愛の声色は怒りを含んでいた。
雑誌の一面らしきモノクロのページに大きく表記されている太文字。
国際大会連続欠場の不二愛、急性白血病か?!
俺の眉間に深々と皺が寄った。

『勝手に白血病にするなー!』

「待て、破く前に見せろ。」

愛がぐしゃぐしゃにしようとした紙を咄嗟に受け取った。
某テニス雑誌の一面をコピーしたようだ。
でたらめばかりが綴られているのを見ると、苛立ちを覚える。

『雑誌の編集部の人から匿名でテニス協会に送られたページなんだって。』

「…もう出回ったのか?」

『まだ発売前だから出回ってない。

協会に裏から手を回して貰ったから、出回らないよ。』

愛は片頬を膨らませた。
拗ね方も可愛いが、そう口に出来るような状況でもない。

『コーチも協会の会長も激怒してる。

出回ってたら告訴したかもって。』

「そうか…。」

『まあ、アメリカで試合に出た時点で元気だし、出回らないだろうけどね。』

出回ったとしても、世間はこの内容が偽りだと気付くだろう。
俺は愛に紙を返した。
愛はそれを何度も何度も憎しみを込めて折り畳み、ポケットに無造作に入れた。

『雑誌にこんな事載せられるかもしれないなんて、あたしには無縁だと思ってた…。

メニエールも何時か噂になったら嫌だな…。』

テニスの腕が愛程にもなれば、雑誌に掲載されるのも理解は出来る。
愛は美人だし、話題性もある。
しかし、こういった類の記事が掲載されそうになるとは。
愛も散々だろう。
ぐったりと項垂れた愛の小さな頭をゆっくりと引き寄せた。

『疲れたけど、国光に癒されてる…。』

俺はお前を支えられていると思っていいのだろうか。





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