りあじゅうな電話

愛と交際が始まった当日の夜。
愛からのとある一文で電話をかけた。

―――お兄ちゃんに気付かれちゃいました…!

「何故兄に気付かれた?」

俺は自室のテーブルに片腕を置いた。
兄の不二に気付かれるにしては早過ぎる。
交際を秘密にしたいと言い出したのは愛だと言うのに。

《顔に出ていたそうです。》

「どんな顔をしていたんだ?」

《うーん……にやにや、かな?》

「そうか。」

《早速油断したのに、怒らないんですか?》

「お前の兄に気付かれるのは想定内だ。

それに今日は…俺も嬉しかったからな。」

《…っ…!》

愛が言葉に詰った。
きっと何時もの反応だろう。
しかし、愛は一転して話を変えた。

《あ、そうだ。》

「如何した?」

《えっとですね。

お兄ちゃんが言ってたんですが、き、き…》

「?」

《き、キューピッド…。》

また突拍子のない事を言うものだ。
一体何の話だというのだ。
しかし、愛のこういった所にも惹かれた自分がいる。
聞いていて飽きないからだ。

《ま、また話します!》

「そうか。」

愛が頭の中で上手く内容を纏められるまで待とう。
しかし、キューピッドなどという聞き慣れない単語が出てくるというのは非常に気になる。
兄が関わっているとなれば尚更だ。

「今日はもう寝るといい。

明日はお互いに朝練があるだろう。」

《はい、そうですね。

お電話嬉しかったです。》

「俺もお前の声が聞けて良かった。」

《うぐ…なんだこのリア充は…!》

「?」

りあじゅう?
知らない単語だ。
明日、愛に如何いった意味なのかを尋ねよう。

《そ、それじゃあ、おやすみなさい。》

「ああ、おやすみ。」

通話終了を静かにタップした。
心が温かい。
愛は不思議な力を俺に与えてくれる。
明日の朝練も頑張れそうだ。



2016.11.29




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