枯れた樹(1/4)



『はあ…』

ハルルの樹の下で一人溜息をついた。
他に人は誰もいない。

『せっかくハルルに来たってのに、まさか樹が枯れるなんてね』

上に目を向ければ視界一杯にハルルの樹が入る。
だが、花の色は黒ずんでいて暗い雰囲気を醸し出している。
こうなってしまった原因の出来事を思い出した。




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ハルルに着いた頃、町は結界に守られ人々は平穏な暮らしを送っていた。
ある程度街の景色を堪能した後、宿屋で旅の疲れを癒していたのだがなにやら外が騒がしい。
何かと思って様子を窺ってみたら、魔物が人々を襲っていたのだ。

『どうして魔物が!?』

空を仰いでみれば、つい先程まであった街を覆う円環、結界が無くなっていたのだ。
結界は外の魔物から町を守るためにある、生活する上でなければならないものだ。

大きな動揺を感じ、冷や汗が頬を伝う。
自分の獲物である剣を引っ提げて外に出た。




偶然滞在していた騎士団の活躍もあり、無事に魔物は退けられた。
しかし、結界魔導器〈シルトブラスティア〉の機能を持っていた樹が枯れてしまった。
結界魔導器は結界を作り出す魔導器の一種だ。
回りを見れば、魔物によって傷ついた街の人々が地面に座りこんでいる。
剣に付着した魔物の血を払い鞘に収めて腰へ戻すと、一人の騎士が近づいてきた。


「魔物と戦っていたのは君だよね。協力感謝する」

金髪碧眼の若い真面目そうな青年だった。
魔物と戦っている時、騎士達に指示を出しつつ戦っていたことから小隊長辺りの階級だと推測するが、その若さに驚いた。

『別に大したことしてないよ。戦力は多いに越したことはないだろ?』
「いや、魔物を退けれられたのは君のおかげでもある。ありがとう」
 
騎士にしては珍しく律儀だと内心驚いた。
あたしは騎士団に対して良い印象を持っていない。
今まで旅をしてきた中で、自分に悪い印象を与えるようなことを騎士団の人間は行った
思い出すだけで、気分が害される。

すると、女性の騎士が駆け寄って来た。
髪を三つ編みにした、猫目で左目の泣きぼくろが特徴だ 。

「隊長、今のところ街周辺に魔物の気配はありません。結界魔導器の件はどうなさいますか?」
「そうか。結界魔導器は、そうだな……アスピオの魔導士に修復を依頼しに行こう」
「了解しました。…ところで、この方は?」

あたしに視線を投げ掛けながら女性騎士は青年騎士に問う。
心なしか視線には鋭さが含まれていた。

「彼女は我々と共に魔物と戦ってくれたんだ」

その一言で、視線から突き刺さるような鋭い感覚が消えた気がした。

「そうだったのですか…。ご助力、感謝する」
『いや、本当にあたしは何も。…じゃ、この辺で』
「長く引き留めて悪かったね」




そしてなんやかんやで、現在に至るというわけだ。








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