旅の決断(1/5)
「……肝心のフレンはいませんでしたね」
アスピオの入り口にたどり着いて、エステルがポツリとつぶやいた。
「その騎士、何者なの?」
「ユーリの友達です」
エステルがリタの問いに答えた。
リタがユーリに視線をやる。
「ふ〜ん、あんたの友達ね。それは苦労するわ」
「なんだよ?」
前を歩くユーリが振り向いた。
「別に。で、なんでそいつがこの街にいるの?」
「ハルルの結界魔導器を直せる魔導士を探して……」
「ああ……あの青臭いのね……あたしのとこにも来たわ」
「フレン、元気そうでした?」
「元気だったんじゃない?」
「うっわ、適当……」
『清々しいほどにな』
リタの適当な返事にカロルと突っ込んだ。
「騎士の要請なら他の魔導士が動くだろうしもうハルルに戻ったんじゃない?」
「……そんな……」
「で?疑いは晴れた?」
ユーリを見てリタは言った。
「リタは、ドロボウをする人じゃないと思います」
「思うだけじゃやってない証明にならねえな」
「でも……」
「いいよ、かばってくれなくて。けど、ほんとにやってないから」
最後の方は強気の態度はどこへ消えたのか、弱弱しく小声になっていた。
「ま、おまえはドロボウよりも研究の方がお似合いだもんな」
そう言うと、ユーリはふいと前を向いて歩き出した。
「ユーリは素直じゃないんです」
『ひねくれてんなあ』
「……変なやつ。警備に連絡してくるから、先にあたしの研究所戻ってて」
「って言われても、あのこわいおじさんたちが通してくれるかどうか」
ユーリ入り口に立つ二人の騎士を横目に見ながら言った。
「そうね、これ持ってって」
リタはユーリに何かを投げて渡した。恐らく通行証だろう。
「それ見せれば、通れるから」
「サンキュ」
歩き始めたリタがピタリと止まりこちらを振り返った。
「いい?あたしの許可なく街出たらひどい目にあわすわよ」
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