天才魔導士(1/5)
『ふーん、帝都の下町の魔導器の魔核<コア>がね』
街の外に出たはいいが、もういい時間だったので一行は野宿することにした。
エステルとカロルが寝静まった後、ユーリと旅のことについて話をした。
お互いの目的や、これからのこと等々。
目的については色々割愛して深くは言わなかった。
ユーリもまた深く追求することはなかったのでありがたく感じた。
「もう遅い時間だ。見張りはオレとラピードでやるから寝とけ」
『じゃ、お言葉に甘えて寝るわ。おやすみ、ユーリ』
「おう、おやすみ」
--------------------
まだ日が出始めたばかりの頃、自然と目覚めた。
まだみんな夢の中だ。
一人で旅を始めてから睡眠が浅くなった。
特に外での野宿は、ほとんど目を瞑っているようなものであった。
いつ魔物や盗賊に襲われるかわからない恐怖心からである。
『……鍛錬でもすっかな』
剣を持って立ち上がると、ラピードが大きな欠伸をして近寄ってきた。
『おはよう、ラピード。見張りお疲れ』
頭を撫でてやると、ラピードはクゥンと小さく鳴いた。
「大分懐かれてんな」
後ろを振り返るとユーリがいた。
彼もまたラピードと同じように大きな欠伸をした。
「ラピードのやつがオレとフレン以外に懐くなんて珍しいんだけどな」
『そうなんだ。なんでだろ』
「さあな。エステルなんか触ろうとしたら、逃げられてたぜ」
『ラピード、エステルにも優しくしてあげな?』
そう言うとラピードはワンと鳴いた。
了承の意か否定の意かはわからないが。
「それはそうと随分早起きじゃねえか」
『一人で旅してればこうなるよ。いつ魔物や盗賊が襲いかかってくるかわかんないし』
「そりゃそうだな。んで、剣なんて持って何しようとしてたんだよ」
『みんな起きるまで時間あるだろうし、鍛錬でもして時間つぶそうかと』
それを聞いたユーリは悪い笑顔を浮かべた。
嫌な予感しかしない。
「んじゃ、暇なアスカが飯作ってくれよ。オレ昨日作ったし」
『えー、なんであたしが』
「ラピードもアスカが作った飯食いたいよな?」
「ワン!」
ラピードにまで言われては仕方がない。
はあと口から溜息が洩れた。
『仕方ないな……。はいはい、作りますよっと』
「ん……」
エステルは目を覚ました。
そこにユーリが近寄ってきた。
「おはようさん」
「あ、おはようございます、ユーリ。カロルとアスカは?」
「カロルはまだ寝てる。アスカは飯作ってくれてんぜ」
『あ、おはよう、エステル。ちょうどご飯できたところだよ』
皿を持ってエステルの方へと歩いて行った。
その上にはあたしが作ったサンドイッチが並んでいる。
寝ているカロルのもとにユーリが近づいた。
「おい、カロル、起きろ。飯だぞ」
カロルの肩を揺さぶって起こした。
「ん、あれ……巨大な魔物は?」
「んなもんいねえよ。いつまで夢の中にいるんだ、アスカが飯作ってくれたぞ」
「え!ほんとに!?」
カロルはがばっと起き上ってあたしの方へ走ってきた。
「おはよう、アスカ!ねえ、食べていい?」
『おはよう、カロル。ダメ、ユーリが来てから』
「ユーリ早く!!」
「へいへい」
カロルはぴょんぴょん飛んでユーリを急かす。
この光景を見て自然と笑みがこぼれた。
『こういうのも、悪くないかな』
← →