目が覚めた時にいたのは知らない場所で、目の前にいたのは知らない女の人だった。
最初に訊かれたのは、どこまで思い出せるかってことだった。どうしてそんなことを訊くんだろうって思いながら考えを巡らせてみたら、“あの子”がいなくなった辺りで途切れていた。どうしてここにいるのか、あのあと何かあったのか何もなかったのか、全く思い出せなかった。
何とかそう話したら、女の人は頷いて、気の乱れを指摘した。そして、治るまでここにいなさいと言った。やっぱり初対面の人は苦手で……理由は訊けなかった。
何か大切なことを忘れている気はしたけれど、頭がぼんやりとしていて、よくわからなかった。
そんな中でも思い出せたのは、一つの強い気持ち。大切な人達への大切な思い。
みんなを、守りたい。
第[章 雨上り
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