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ハリセンでヒバリと戦っていたことも、一時間経って戻ってきたオレが無傷だったことも、クラスメイトたちにはかなりの驚きだったようだ。
いや、まぁ、並盛の秩序で最強のヒバリ相手に堂々と渡り合ったってことは確かに驚きだろうけどさ……
それでもやっぱり、所詮相手は中学生ですし?
うん、結局はそこに終着するわけですよ。
こんなんでもオレ…………いや、年齢のことを深く考えるのは止めよう。
転生前のことまで込みにするともっととんでもなくなるしな、うん、あえて年齢は数えない!
これに尽きるだろう。
「ぇー、では、次転入生の沢田、前に出て答えろ」
「はい」
教師としては、新しい生徒の学力チェックも必要事項でしょうし、それは構わない。
構わないがしかし、こんなんでも数学の権威で博士でもあるオレとしたら、簡単すぎる問題だ。
そうじゃなくても、ここ中学だぜ?
一応、高校生まで過ごした上での人生なんで、中学程度の問題で躓くわけが無い。
「正解だ」
あっさりと答えを書いた上で戻ったオレのことを見ていた山本は、授業が終わると同時に近付いてきた。
「わりぃ、小僧。この問題教えてくれねぇ?」
「構わないが、今は小僧は止めろ」
「んじゃ、ナギサ。頼む!」
「いいよ」
差し出された教科書の問題をノートに写し、そこから計算式を書きながら説明していく。
分かりやすかったらしく、コクコクと頷いている山本が理解した様子を見て取ったオレはペンを置いた。
「これ、こっちのと同じ公式使ってるから、一回解いておくといい」
「サンキュ! 助かった!」
嬉しそうに戻っていく山本を見送っていれば、後ろの席に座っていた綱吉がオレのノートを見つめていた。
「お前もわからなかったのか?」
またか? と溜息を吐く様子を隠しもせずに言えば、落ち込む。
普段から家で分かっていない問題を一から十まで教え込んでいるのはオレだろ、それくらい分かると気付け。
「――でも、その問題の説明分かりやすかった」
「そうか、それなら今日の自宅での勉強は大丈夫だな」
「ぅ……」
不安が残るのか、口篭もる綱吉に笑って言った。
「まぁ、あの教師じゃ仕方ねぇ部分もあるからな」
家に帰って復習はちゃんとさせるから、安心しろ。
「一回や二回のミスで怒りはしねぇよ」
あまりに改善が見られないなら怒るけど、普段からそこまで理不尽に怒ったりすることは無いだろ。
そう慰めてやれば、そうなんだけど……とぼやきながら頷いていた。
「さて、オレがこの姿になった訳だが……」
昼休みになった。
誰もいない場所、ということで、屋上に場所を移したオレは、弁当を手元に置いたまま口を開いた。
目の前に座った獄寺と山本がゴクリと唾を飲み込んでいる様子が見て取れる。
綱吉は、きっと朝と同じこと言うんだ……と思って溜息を吐いている。
「多分、何かの薬の影響とかそういうのだろ。すぐに戻ると思う」
だから気にすんな、と続けて、今日一日だとしても、中学生活がしてみたかっただけだ、と言った。
「そうか、なら仕方ないな」
「そんなっ、どこの誰がそんな薬を……」
正反対な反応を示すこの二人は見ていて楽しいと思う。
だからからかいやすいんだろう、母さんに会わせたら、母さんが凄い楽しみそうだよなぁ……
「まっ、深いことは考えんな」
さぁ、メシメシ♪ と食事に向かおうとするオレに、綱吉は深い溜息を吐いていた。
「なぁ」
「ぇ? 何?」
かけられた声に驚いた声を上げる少女。
「商店街の方とか案内してくれねぇ?」
まだあまり詳しくなくてな……
「美味しい甘味処とか知ってたら、ついでに教えてくれないか?」
「え? 梛沙君って、最近引っ越してきたの?」
「あぁ、従兄弟のツナんとこに転がり込んだんだけどな……」
流石に甘い物とか、女の子の方が詳しいだろ?
「ダメ……か?」
上目遣いになる程に見つめてお願いをする。
「いいよ! 私で良ければ」
「サンキュ!」
快諾してくれた彼女に、笑いかけた。
「ううん、気にしないで。私は笹川京子、よろしくね」
「ありがとう、京子」
ぁ、呼び捨てにしちゃ悪いよな。
「京子ちゃん、とかのがいいか?」
「いいよ、呼び捨てで」
「サンキュ!」
あっさりと京子呼びの許可を得て、一緒に商店街の方へと行く約束を取り付けた。
それを終えて、授業が始まるから、と席に戻れば、後ろから椅子の背中を蹴られた。
「何で、京子ちゃんと仲良くなってんだよ……」
「いいじゃん? お前には関係無いだろ?」
オレが勝手に話しかけて一緒に遊びに行く約束しただけだ。
「悔しかったらお前もやってみろよ」
ハハンッと鼻で笑ってやれば、ムキーッと紅くなっている。
お、おもしれぇ……
「女誑し」
「んー、人聞き悪いこと言うなよなー」
別に誑してなんかねぇし♪
「ナンパしてたじゃないかよ!」
「これがナンパだと言うなら、お前も同じくらいのことできねぇとな」
これくらいは男の甲斐性だぜ!
「お前の目当ては彼女だけなんだろ? 簡単簡単」
ナンパってのは、知らない人に対する声かけだろうからな。
目当てが顔見知りで友達なんだから、簡単だろ、一緒に遊びに行こうって声かけるくらい。
「簡単に言うなよなぁ……」
「ははっ」
これくらいなら簡単だろ?
そりゃ、覚悟は必要かもしれないけど、すでに友達になってんだし、軽いけどなぁ……
「あんまりのんびりしてっと、オレがとっちまうぞ?」
ケケッと笑ってみせれば、綱吉が真っ赤になって怒った。
「ナギサ!!!!」
青いねぇ……若さって何物にも変えがたい宝物だよなぁ……
オレも少しはその若さを分けて欲しいよ。
そんなことを思ってしまった。
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