爾後


冷えに包まり
侵された肌に
氷の花弁が舞い降りて溶ける

瞳を隠し
もう動かない
瞼の奥の代わりを果たして

責める言葉ならば
いくらでも沸いただろう
不条理に追い込まれ
おとしめられてゆく中で
結んだ唇のままで
睨みつける事もできたはず



抱く身体は
どこにもない
記憶に断片が
霞むばかりで

呑んだ言葉は
土の薫りと
露に流されて
耳に届かない


『例えばもし
降り積もる白に
悲鳴を托すことがなければ』

『例えばもし
凍てつく面(おもて)に
痛みを見出だせたならば』

浮かぶ分岐は揺らいで
また目の前にちらつけども
不条理に飲み込まれ
おとしめられてゆく中で
伸ばされる手は無く
仮定と共に消えてゆく



抱く身体は
どこにもない
たおやかな手も
知らないままで

馴染む香りも
靴音さえも
過去に流されて
耳に届かない


これがあなたの言う
愛だとするのなら
それを叩き潰した
角張った掌は
嗚咽混じりに教えて欲しい
なんと呼ぶべきだろうか



抱く身体は
どこにもない
記憶に断片が
霞むばかりで

呑んだ言葉は
土の薫りと
露に流されて
耳に届かない

抱く身体は
どこにもない
たおやかな手も
知らないままで

馴染む香りも
靴音さえも
過去に流されて
耳に届かない



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