Boy of the flask drama | ナノ


▽ Sincere fetters-2


 魔物はじっとフォームを見詰めていた。そんな魔物を見つめ返しながら、フォームの脳内ではこの場をどうやって切り抜けるか考えていた。魔物が今から何をしようとしているのか、それをフォームは知らなかった。そしてフォームが一歩後ずさろうとしたときに魔物はその瞳をきらきらとさせてフォームに叫んだ。

『あなた、私の言葉が分かるの!?』
「は!?…は、はい、わかります…?」

 フォームの言葉に猫の姿の魔物は飛び跳ねた。うれしいと叫ぶ魔物を前にフォームの脳内には疑問がわき出ていた。この魔物はいったいなんなんだろう。魔物は自分の言葉が分かるようだし、突然襲ってくるということはなさそうだ。フォームがそっと魔物に近づけば魔物はフォームに飛びつく。よける暇もなく、フォームが気付いた時には魔物はフォームの服にしがみついていた。

『あなたをビーストテイマーにしてあげるわ。私をパートナーにしなさい!』

 その言葉に目を見開く。そういった猫を凝視すれば、猫はきらきらとした赤い瞳でフォームを見詰めていた。フォームは困って猫を引きはがそうとする、しかし猫は驚くべき力でフォームにしがみつき、離れようとしなかった。

「ビ、ビーストテイマーとは…?」
『私たち、魔物をパートナーとして戦う人間のことよ。私たちは貴方達の手助けをするの』

 きりっとした顔で言いのけた魔物にフォームは困った顔を浮かべ、首を振る。

「話すことのできる魔物である君を戦わせることはできない。そもそも僕が信用できる人間ともわからないのに、なぜそんなことを言うんだ」
『やっと自分のこと僕って言ったわね。私、あなたの心がわかるわ。ずっと一人ぼっちで苦しかったのよね。私も同じだもの』

 そういった魔物の瞳はフォームの瞳によく似ていた。そして魔物は語る。生まれた瞬間から私はバーチャルである魔物でしかない生き物。この世界の魔物は種族によって意思疎通が可能なものと不可能なものに分けられる、私の仲間はこの層にはどこにもいないし、ずっと孤独に耐えてきた。誰もが大きな成体である中で私だけは幼体で、あなたに感情移入したところもあるわ。だから、と魔物は続ける。

『私をあなたのパートナーにしなさい』

 フォームは迷っていた。魔物はレベルとしてはとても強そうだ。だが彼女自体は本当のことを言っているのだろうか、疑いの意と信じたいという思いが混ざり合い、フォームの心の中にこちゃこちゃとした淀みを作った。そしてフォームはため息をつく。

「…好きにしろ。ただ、私はお前から名前を聞かなければお前を何と呼べば良いのか分からない。私の名はフォームだ」
『!!…私の名前はコネクト。あなたのことはフォームって呼ぶわ!あと、私の前では僕っていうこと、口調も本心通りでしなさい!まるわかりよ?』
「…分かった。君のことはコネクトって呼ぶから僕のこともフォームって呼んで」
『ええ!』

 何故か魔物を信じる気になったが、自分の心をすべてさらけ出せる相手が欲しかったのは本心だ。肩で嬉しそうに鳴く魔物のパラメーターに自分の名前が刻まれたこと、自分のパラメーターに『ビーストテイマー』の欄が現れたのを見ながら、フォームは自分がコネクトに心を開きかけていることに気付いていなかった。


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