5.恋心×ルフィ妹


「そいつに何か用かよ」

まだ、小学校に通っていた頃のこと。
一つか二つ年上の男の子が、駄菓子屋さん帰りの私を囲んだ。
要求は簡単。
おやつとお小遣いを渡せって。
もちろん抵抗したけど、怒った相手が私の肩を押した。
その拍子にしりもちをついちゃって。
びっくりしたのも相成って泣きそうになった。
もう、限界! そう思ったときに響いたのが、冒頭の言葉。

「大丈夫か?」
「誰だぁ?」
「なんだよ、やんのか?」

そっと手を差し出して立つのを手伝ってくれたサボお兄ちゃんにも降りかかる言葉。
当然のように無視するから、相手は一層怒るわけで。
乱暴な手段にでようと、男の子の腕が振りあがった。

「誰に手あげてんだよ」

でも、その腕が降りることはなかった。
エース兄が男の子の腕を掴んでいたからだ。
眉を寄せ、相手をにらみつけるエース兄。
私を気遣うサボお兄ちゃん。
私は、といえばどうしたらいいかも判らずに、されるがまま。
サボお兄ちゃんだけが動く空間。
緊迫した雰囲気を醸し出すエース兄。
そこに、突如として響いたお兄ちゃんの声。
はっとしたように、エース兄の腕を振りほどいて走っていく男の子たち。
どうしたんだ? なんて呑気なお兄ちゃんにサボお兄ちゃんがなんでもないと言って、エース兄が私をちらりと見た。
あの日、あの時から続いてる。



「あー? お前に関係なくね」

駅前で友達と分かれた直後に私の肩を掴んだ手は、あの日のように他の人の手によって距離をとらされていた。
もちろん、助けてくれたのはエース兄。
ねめつけるように睨む相手を、呆れたように見ている。

「俺の連れだけど?」
「けっ、しらけた」

エース兄に吐き捨てるように言って、乱暴に腕を払って男の人は違う人に声をかけに行った。
男の人に雰囲気の似た女の子とはしゃぎ始めたのを見て、ため息をつく。
と、同時にひかれた手。

「いくぞ」
「え、あ。うん」
「…」
「え、エース兄?」
「あ?」
「ありがとね?」
「あぁ」

一歩先を歩く、あの日よりも高くなった後頭部に話しかける私。
大きな手に掴まれた手首が熱くてたまらなかったから、その熱にそっとキスをした。
まだ内緒。
まだ秘密。
いつ明かそうか、妹じゃないってことを。


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