3.弟


「なんだ、サボも居たのか」
「・・・ルフィ」
「ん? なんだぁ? エース」
「静かにとは言わねぇ。壊れるような勢いで開けんな! 居なくて鍵かかってたらブチ破るつもりか! ってかノックぐらいしろ!」
「お? 悪ぃ悪ぃ」
「てめぇ・・・反省してねぇだろ」
「だってよー、エース居んの判るしよ」
「は?」
「だからー、エース居るって判んだよ」
「なんで」
「匂い」
「は?」
「匂いだって。エースが居る時と、居ない時で匂いが違うんだ」

弟の強襲に躾をしようとした兄弟が、ニシシという無邪気なそれに絶句したのを見て、あーぁと思った。

ガツン!
「いってぇ! 何すんだよエース!」
「うるせぇ!」

兄弟の鉄拳を頭のど真ん中で受けた弟が涙目で患部を抑えている。殴った兄弟を見れば、フン! と鼻息荒く簡易キッチンへと歩いて行った。堪え切れなくなった笑いをクスクスと漏らしてしまったら、膜の張った大きな目がすがりついてきた。

「ノックぐらい、しないとな?」
「・・・おう」

小さく答えた弟の頭をポンと叩いて奥へうながしたら、いてぇ! と声が漏れた。あぁごめん。そこ殴られたんだったっけ。ハハハ。



エースが簡易キッチンからルフィの分のコップを持ってきて座ると、きょろきょろしていたルフィも座った。

「サボ、しばらく泊まりか?」
「ん? そうだよ」
「エースはどこで寝んだ?」
「は? おれはそこに決まってんだろ」
「サボはそっちの部屋だよな?」
「うん?」
「なんでそっちで寝ねぇんだ、エース」
「サボが寝るだろ。ってか、おれのベットはそこだ」
「一緒に寝りゃいいじゃねぇか」
「はぁ?」

今はエースの背後になっているベッドを指だけ後ろに向かせて指さしていたエースが、大きく口を開けてこちらを見る。あんまりにも間抜けな顔だったからにっこり笑って言ってやった。

「なんだエース。一人で眠れないのか? おれはいつでも歓迎だよ?」
「バッ!」
「ってのは冗談」
「サボ、てめぇ・・・」
「ルフィ、いくら何でもそれはないなぁ」
「おいサボ!」
「なに、一緒に寝たいわけ? ちょっと遠慮したいなぁ」
「違う!」
「サボ」
「ん?」
「サボはおれのこと嫌いか?」
「? いや? そんなことあるわけないだろ?」
「じゃあ、決まりだ!」

ブチブチと文句を言い続けるエースと、疑問符を浮かべるおれを置いてルフィが隣室へと歩いて行った。そこには、おれの荷物しかないぞ? と思って見ていれば、おもむろに布団が投げられたのが見えた。

「ルフィ?」
「おれ真中な! で、サボと、エースだ!」

バフン! と放り投げた布団に飛び込んだ弟がニシシと笑う。
それを見て、兄弟と顔を見合わせて肩をすくめた。
そう言えば、前回おれが一人で泊まったのを仲間外れだとかなんだとか騒いでいたっけ。
どうやら、しばらく長男2人、弟1人で川の字が決まったようだ。


[*prev] [next#]

back



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -