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miss√(2/2)

携帯を買ってもらってから一週間。
すかすかだったアドレス帳にもたくさんの人が名前を連ねるようになって、私はちょっとした満足感を得ていた。
家に帰ってからは他にすることもないからずっと友達とメールしてる、ちょっとした現代っ子。だ
神奈川の友達が言うには、最近はメールをきっかけに恋が発展するようなこともよくあるらしい。
私がひっそりと立てている中学卒業までに恋人を作るという目標を実現させるためにも上手く使っていきたいと思う。
……思うけど、

「あ、また忍足」

現状頻繁にメールをしている男子は忍足だけだ。
男子のアドレスを他に知らないわけじゃない。
だけど忍足以外の男子とはなかなかメールが続かない。
メールをしていてこれは学校で話したんでいいな、なんて思わされるのだ。
その点忍足は巧みなもので、こちらが飽きないように上手く話を展開させてくれる。
……忍足を褒めるなんて本当は本意じゃないんだけどね。
唇を尖らせながら枕の上に置いた携帯を眺めていると忍足に返信してから三分も経っていないのにまた携帯が光りだした。
早いなあ、と誰に言うでもなく呟いて携帯を開く。

「あれ……忍足じゃない」

知らないアドレスだ。
アド変した友達かな、なんて思いながらメールを開いてみる。
件名のところに並んでいる仁王雅治の四文字には見覚えがない。
そして本文、
『小学校が一緒だった仁王。
今ヶ瀬の友達にアドレス聞いてメールした』

「……仁王、知らないなあ。
いや、覚えてないのだけかな」

たった二行のそっけないメールの内容に首を捻りながら返信を打つ。
友達って誰にアドレスを聞いたんですか、本当に同級生でしたか? みたいな内容。
五分くらいして返信が来た。
先に来た忍足のメールに返信してからメールを確認する。
アドレスを教えた友達の名前と六年の途中で転校してきたから私は覚えていないかもしれないという旨が書いてあった。
仁王君に私のアドレスを教えたという友達に確認のメールを入れてから私は考え込んだ。
この人はなんで自分のことを覚えていないかもしれないような相手にメールを送ってきたんだろう?
私が覚えていないだけでもしかしたら私と仁王君はすごく仲が良かったり……いや、ないな。
さすがにそれなりに親しくしていた友達のことは覚えてるはずだ。

「……うーん」

仁王君が私のことを誰か違う人と勘違いしてるとか……それ位しかないよね。

『他の子と勘違いしてるんじゃない?
私やっぱり仁王君のこと思い出せない・・・』
『間違ってない。
絶対に今ヶ瀬志乃で合ってる』

返信はすぐに来た。
仁王君はそうやって言い切るけど、やっぱり私は信じきれない。

『だって私の顔とか全然覚えてないでしょ?』
『覚えてる。
六年のとき、俺が引っ越してきたとき今ヶ瀬は髪を切ったばかりで男みたいだった』

……確かに私は六年生のとき髪の毛をばっさり切った。
その髪も今では伸びてしまっているけど。

『仁王君が勘違いしてないのは分かった。
だけどなんで私にメールしてきたの?
仲良くはなかったよね』

そのメールに対する返信はしばらく来なかった。
仁王君からのメールを待っている間、私は忍足とのメールを続けていたけど仁王君のことを考えているとなんだか身が入らない。
仁王君からのメールだと思って携帯を開く、なのに実際には忍足からのメール……それだけのことに少しいらいらした。
顔も知らない仁王君からのメールを何でこんなにも待ちわびてしまうんだろう?
もしかして期待しているのかもしれない。
顔も覚えてない元同級生からいきなりメールが来て、その同級生は自分のことが好きだったからわざわざメールをよこしたのかもしれない……なんて少女漫画みたいな展開を。
馬鹿らしいとは思うけどきっとそうだ。
だって私、今すごく胸がどきどきしてるもん……仁王君がどんな人かなんて少しも知らないのに。
携帯が光る、受信音がなるよりも早く私はそれを開いてメールの送り主を確認した。

「におー君だ」

嬉しくて少し間延びした声を上げてみる。
メールを開く指が震えた。
期待したような展開になんかならないって分かってるのに、私って意外に夢見がちだ。
件名から繰り返されていたREが消えていた。
そして本文には、
『今ヶ瀬のことが好きだったからメールした』
絵文字もなくそれだけ書かれていた。





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