エドワードさんの受難 その1「Chocolate」


 コンビニだろうがスーパーだろうが果ては100均ショップまで。つい先日までお正月の棚だったところにきらびやかに飾られている彼女たち。





 待ち合わせに10分遅れてしまった。ウィンリィは「寒いからコンビニで待ってる」とメールをくれたエドワードを探す。すぐに見つかった小さな金髪は、髪と同じ金色の瞳で店内のある一角を彼女の苦手な古文のテストさながらにらんでいた。

「なに怖い顔してんの?」
「ウィンリィ!な、何でもな…」
「バレンタイン?リンに何あげるの?」
「……それだよ」
 苦々しい顔で頷く。チョコレートをそんな顔でにらむ女子はそういないわよ。

「手作り?買うの?」
「手作りは…たぶんオレ無理。でも買うとなると、いろいろありすぎて…だんだん何がいいのかわかんなくなってきて」
 エドワードの彼氏の顔を頭に浮かべる。エドワードが選んだ物ならば何をあげても喜ぶに違いない顔。むしろ、この姿を見せるだけで大喜びするんじゃなかろうか。
 エドワードに対してだけはあんなに単純な男にいかにして喜んでもらえるかを、どんな難解な数学の問題もさらさら解いてしまう利口なスーパーコンピューターを赤い顔でうんうんフル回転させている、こんな姿。
 女友達から見ても大変かわいいと思う。うん、かわいい。

「えー、いいじゃない別にポッキーとかで」
「は?」
「ポッキーをくわえて『リン、あ・げ・る』って言ってやれば大喜びよ!」
「できるかー!!!!」

 名案だと思うんだけどなぁ。せっかくかわいい親友のためにアイデア提供してあげようと思ったのに。
「何よ、じゃあチョコレートソース持って『これでオレを食・べ・て』っていうのでいいの?」
「何で2択!?しかもハードル上がってるし!!無理!ぜぇってー無理!!」
 うーんまぁね。


「…よし!じゃあ今日はチョコレート探しに行こ!」
「えっ?おまえ服買いに行きたいって…」
「それはまた今度!」
 エドワードの手を強引に引いてスクランブル交差点へ出ると、一瞬困った顔をした後にはにかんだ笑顔で付いてくる。

「…ありがと、ウィンリィ」

 素直でよろしい。

 結局選び切れずにリベンジする羽目になるのだが、それとバレンタイン当日はまた別のお話。




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