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Summer Kiss
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「ふぅ、サッパリした!」



温めのシャワーを軽く浴びると、火照った肌に水のベールを纏ったようで心地よい。

洗面所で素早く髪を乾かしてバスルームを出ようと扉を開けると、扉の前に腕組みをした清墨がいた。



「わ!ビックリした。ど、どうしたんですか?清墨さん…?」



腕組みしたまま難しい顔をして目を瞑っていた清墨だったが、カッと目を見開くと、何の前触れもなく夏子の両肩をガシッと掴んだ。

今夜は他のSP全員が仕事で出払っている。キャンディもいない。

この広い邸宅に、夏子と清墨の二人だけ。

そんな状況も相まってか、つい要らぬ妄想が頭を駆け抜けてしまい、夏子は狼狽した。



「あ、あの!清墨さん!こ、こんなところじゃ…!」

「何を勘違いしてる?」

「え?」

「夏子はいわゆる助平というやつか、恥ずかしいヤツだな」

「ス、スケベって何ですか!」

「お前、今ヘンな想像しただろ」



可笑しそうに顔を歪ませる清墨に、夏子は頬を膨らませた。



「安心しろ。今は何もしない」

「今…は?」

「それよりもっと重要なことだ。かき氷の件だ。…重大事件だ」

「え?かき氷がどうかしたんですか?」



あまりに真剣な清墨の物言いに、固唾を飲む夏子。

かき氷パーティーのことかな?もしかして何かまずかったの?



「パーティーを計画する前に…」

「ま…前に?」

「まずは俺に作れ」

「…はい?」

「あの有名な…日本のかき氷…夏のロマン…俺はずっと夢に見てきたんだ。まずは俺に作るのがレイギだろう?」

「れ、礼儀?」

「いいから今夜、離れに来い。あの小包を忘れるなよ」



ポカンとする夏子に念を押した清墨は、満足げな表情で去っていった。

一人残された夏子の脳裏に思い出されるのは、かき氷器を見た途端に様子がおかしくなった清墨の姿だ。



(そっか。そんなにかき氷食べてみたかったんだ。イギリスにはあんまりないっていうし、食べたことないんだなぁ)



きっと本物のかき氷が食べられると分かって、日本文化好きの血が騒いだのだろう。

かわいいやら、おかしいやら。

夏子は(素直じゃない恋人のために、こっそり先にかき氷を作るくらい罰は当たらないよね)とフフッと笑った。



*****



ひとまず有り合わせのもので夕食を済ませ、洗い物を終えると冷凍庫の氷を確認する。

充分すぎるほど作り置きされている氷を確認してから、夏子は皿やシロップなどの準備を始めた。


清墨は言葉少なに夕食を済ませると「待ってるからな」と一言残して早々に離れへと戻ってしまった。



「清墨さん、子供みたい…」



そう一人呟く夏子は、それでも何となくこうして日本の夏らしいことを清墨と出来るとあって、少し楽しくなってきている。

シロップも少しずつ失敬して、せめて基本の味だけでも全部試せるようにとズラリとトレイの上に並べてみた。



「かき氷器とシロップだけでそれっぽくなるなぁ」



そう一人呟きながら清墨が喜ぶ顔を想像して、夏子は笑みを浮かべてトレイと共に離れへと急いだ。








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