夏祭りの夜に
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「おせーな」
神社の木にもたれながらスマホを見る。
待ち合わせはとっくに過ぎている。
「・・・ったく」
「昴先輩、遅れてごめんなさい」
はぁはぁと息を弾ませて待ち人はやってくる。
「夏子遅かったな。まさか来る途中でナンパとかされなかっただろーな?」
「・・・ち、ちゃんと断りましたよ」
ちっ、やっぱりか。
「まぁ、いいや。少し歩くか」
「はい」
そう言って歩き出したが、この人ごみ・・・いつかはぐれてしまいそうだと思い手を差し出す。
そっと握られた手は優しい温もりだった。
「あ!先輩。金魚すくいですよ?」
「やりたいのか?」
「はい」
「ガキだな〜お前」
「いいじゃないですか〜」
そう言うと早速金魚すくいを始めた。
夢中になりすぎて浴衣の袖が濡れてることも気にしない夏子。
でも、技術は伴わないようで・・・
「あっ、また逃げられた〜」
「お前下手だな。貸してみろ」
見かねて金魚をすくってやる。
「すご〜い、さすが昴先輩」
金魚ごときで単純に喜ぶ夏子。
でも、そんなお前だから好きになったのかもな。
「あっちで綿あめやってますよ〜」
「お前、まだ食うのかよ」
「そ、そんなに食べてないですよーだ」
振り返ってべーっと舌を出す夏子。
「わかったわかった。買ってやるから」
「いいんですか?やった〜」
綿あめを買って楽しそうな夏子。
見てるオレもなんだか心地よかった。
そんな夏子がある一点を見て、急にそわそわしだした。
「どうした?」
「あ・・・いえ」
その理由はすぐにわかった。
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