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ハジメテの、夏
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お祭り特有の喧騒。


会場へ向かう人々に、流されないように清墨さんの手をしっかりと握り締める。






歩く先には打ち上げられた、大輪の花。






「わぁ…!」





ドン、ドンと。


次々に打ち上げられては、色とりどりに輝くそれに私の目は一気に奪われる。





「清墨さん…?」




そこで、スタスタと私の手を引いて歩いていた清墨さんの足がピタリと止まる。





「夏子」


「はい」




繋いだ手は、そのままに。






「…コッチだ」


「あっ…」





再び、グイっと手を引かれると少しだけ人気の無い場所に連れて行かれる。





「わぁ…。ここから、こんなに綺麗に見えるんですね」



「ああ。…お婆ちゃんに聞いた」



「そうだったんですか?いつの間に…」





仲良くしている二人の姿を思い浮かべると心がじんわりと温かくなる。






「夏子」


「わっ…!」





急に背中に感じる体温。


私の身体は、清墨さんの腕の中にすっぽりと収まる。




「あ…あの…?」




後ろから回された清墨さんの腕は、前で私の手と重なる。


抱きしめられるようなソレに、私の身体は緊張で少しだけ強ばる。





「………綺麗だ」


「…え?」





花火の音に紛れて、清墨さんの声が耳元に落ちる。





「…浴衣。侍の寝巻きにしておくには勿体無いな」



「清墨さん………」




その言葉が嬉しくて、彼を見上げる。


その耳は、少し赤く色づいているようだった。




「胡麻にも衣装だな」


「それを言うなら、孫にも衣装ですよ」




清墨さんらしい褒め方も、いつの間にか喜べるようになっていて。


ふと、浴衣に着替えた時の一件を思い出す。




「あ……。もしかして、crazyって言ってたのは照れ隠しですか?」



「なっ…!?」




そう尋ねれば、その表情が一気に赤らんだ。





「…ふふっ、だから皆さんに」



「夏子!」



「ふふっ!」






清墨さんのことが、少しだけわかった気がした。








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