捧げもの | ナノ

 『でーと』 ルクティア/レナ様相互リンク記念



買い出しが終わって荷物を置きに宿に向かっている途中、ガイとアニスにあって。

『これから宿にもどるから、荷物持ってってやるよ』
『たまには2人でデートでもしてきたらどお〜?』

ほら、とアニスに背中を押されてそのままティアとふたりでしばらく街をブラブラしていた。


アニスがデートだなんて言うから、変に意識してしまってギクシャクしてしまっていたけれど、偶然通りかかった店の前でティアが足を止めて。

「ん?ここ入るか?」

「あっ…違うの。別に入りたいなんて…!」

慌てて否定するティアの瞳をじっと見つめると、だんだん声が小さくなっていく。
その姿がなんだか可愛くて、思わず笑ってしまう。真っ赤な顔で睨み付けてくるけれど、入りたいんだろ?と問えば、こくんと小さく頷いた。

「…なんだか、悔しいわ」

「はぁ?なんだよそれー」

なんて、むくれてみる。お互いにむくれた顔を見合わせて、なんだかおかしくてくすくすと笑いあって。どこか楽しそうにみえる背中についていく。

彼女の目的はたぶん、ブウサギやチーグルのキーホルダーだ。

想像通りそこに向かって行く途中、アクセサリーのコーナーを通りすぎようとしたときに、ひとつのネックレスが目に入って。とても綺麗なのにどこか可愛らしくも感じるそれを思わず手にとって、似合いそうだな、と思う。

…たまには、いつものお礼をしてみるのもいいかもしれない。

彼女に気づかれないようにネックレスを握りしめて、目的のコーナーにたどり着いたティアの目線の先にあるものを覗く。

ブウサギのキーホルダー、色とりどりのシュシュ、端に小さくチーグルの刺繍が入っているタオル。

いろいろなものが並ぶなかで、一番最初に目に入ったブウサギのキーホルダー。

(……ティアがすきそうだな。
あ、これも『かわいい…』とか言いそう)

案の定隣から、かわいいと呟く小さな声が聞こえて、ほらなと笑う。それに気づいたティアは顔を真っ赤にして、慌てる。そして結局、先程と同じように仏頂面になった。

いつもの冷静な態度からは考えられないほど、コロコロと表情を変えるティアがとても可愛らしくて。きゅうと胸が締め付けられるような、心臓を鷲掴みにされるような、なんとも言えない気持ちになる。


(……ほんっと、俺、ティアのこと…す、すき…だよなぁ…。いまもティアのことばっかだし。
……かわいーんだもん、あいつ)

そんなことをぼんやりと考えて恥ずかしくなって、手の中のものを握りしめて、なんだか熱くなってきた顔を、再び自分の世界に入りはじめた彼女からそらす。

ブウサギに夢中になってるうちに、ネックレスの会計を済ませてきてしまおう。そのうちに熱い頬も少しは治まるだろうし。


「ありがとうございましたー」

会計を済ませて、ティアもブウサギのキーホルダーをひとつ購入した。
宿までの帰り道の間、軽く雑談をしながら、ポケットの中のラッピングされた小さな袋に触れて、バレないように小さく深呼吸をする。

(……あいつ、喜んでくれるかな。ちょっと心配になってきた。
つーか俺はちゃんと渡せるんだろーか…。
……うわ、すげー不安)


「…ルーク?どうしたの?」

「い、いやっ!なんでもねーよ!その…腹、減ったなって!」

嘘は言っていない。腹が減ったのは事実だ。晩飯なにかなー、と腹をさすりながら言うと、きょとんとしていたティアが、少し間をおいてから、ふふと笑いだした。

「あなたのすきなものよ」

(う…っわ、やべ、すげーかわいい)

思いっきり抱きしめたくなるのを一生懸命堪える。

夕飯はティアの言う通り、大好物のチキンステーキだった。食べ終わって、そのままみんなで雑談して。部屋にもどって意を決して、結局渡せたのは一時間後だったとか。


fin

→おまけ

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