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「これ何?」
「え?ああ、これは…」
――どうしてこうなるんだよ。
「なぁ、これほしいんだけど…、どうすればいいんだ?」
「…お金は持ってるの?」
「んー1138ガルドなら」
「62ガルド足りないわね」
「まじかよ…買い物って面倒くせぇな」
――…うわっ、そんなくっつくなって!
「62ガルドくらいなら、私が―」
「…っ俺が払う!!」
もう見ていられなくなった俺は2人を引き離し、間に割って入った。
後ろからティアと昔の俺のやり取りを聞いていた俺。
耐えられないから。普通に無理。大好きな人と昔の俺が仲良さそうに話してるうえ、無駄に近いなんて。
俺だから、まだ言い合いで済むけど…他のやつだったら、完全に黒いオーラを発していると思う。
昔の俺は頭をぽりぽりかきながら、うざったそうに口を開いた。
「…うるっせーな、別におまえに払ってもらっても嬉しくない」
(ティアだったら嬉しいのか…やっぱり俺なんだな、こいつ)
ティアは買い物に集中していて俺たちの話を聞いていない=昔の俺に本音を言っても大丈夫。
はあ、と小さくため息をつき、ポケットの中から財布を取り出して62ガルドを昔の俺に押し付けた。
落としそうになりながら、それを不満そうに受け取る昔の俺。
昔の俺ってまじでムカつくやつだ。
見るたびに、なんだかみんなに対して今更だけど謝りたくなってくる。
「俺だって本当はお前なんかに金貸したくない。…それと、ティアが今買出し中だってこと忘れんなよ」
「ヤキモチ妬いてんの?」
ニヤリと嘲笑うように昔の俺が笑い、ムカついて身を乗り出した瞬間、
「う…っうるさい!だいたいな、おまえっ」
「ルークたち!もう、なんだか言い合ってないで早く行きましょう。買い出しは終わったから」
体がグイッと引っ張られ、ギャーギャー言い争ってた俺たちを、ティアがさっきの俺のように二人の間を引き離した。
その片手には少し膨らんだ道具袋があり、俺はいつものように手を差し伸べた。
「…ティア、俺持つよ」
そんな俺を白けた目で昔の俺がガン見していたけど、あえてここは見なかったことにしておこう。目を合わせたら、いろいろと面倒なことになると思うから。
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