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「…ティアー?どーしたんだよ」
「…あっ、な…なんでもないわっ!も、…もうすぐ、アニスが運んできてくれるわよ」
「そっか、わかった!今日はティアとアニスの(料理上手い組の)だから楽しみだな〜」
ニコッと笑うその笑顔に、心臓が大きく脈をうったかと思うと、次は熱があるんじゃないかってほど、顔が熱くなる。
「…ルーク。今一瞬、私のこと横目でチラリと見ましたわね?」
「い、いやっ!見てねえ見てねえ!」
「…全く。私だって頑張れば、美味しい料理も作れますわ!」
ルークを見るたびに。ルークと、話すたびに。
(私…本当、どうしちゃったのかしら…)
ティアにはそれが何かは、まだわかっていなかった。
こんなに彼で頭が支配されそうになるというのは、初めてだったから。
───…
「…ニンジン、いらねえ」
ポテトを口に放り込み、オレンジ色のそれを見た途端、ルークによってぽそっと呟かれた言葉。
やはり、ルークはニンジンが大嫌いのようだ。
それを聞き、ガイがルークに話しかける。
「ルーク、いい加減好き嫌いなおそうぜ。それ以上背がのびなくなるぞ」
ガイはいつも一言多い。
ルークがニヤリと黒い笑みを浮かべ、アニスに耳打ちをした。
「アニス、ガイが抱きついてほしいって!」
「りょうかーいっ」
「んー、美味し…ぎゃあぁぁぁあ!!!!!」
ガイ瀕死。
「ティア!これやるよ」
ガイが伸びているのを横目で見ていると、ひょいひょいっとオレンジ色のニンジンが隣から飛んできた。
「…えっ?」
「もうそれティアのだから!」
ルークの指の指している方向を見てみると、ポテトの上にぽんぽんっと乗っている、ニンジンが。
「…好き嫌いはダメじゃない、ルーク…」
ティアはそれをひとつ箸でつまみ、ひょいっと口に放り込んだ。そして、複雑そうな表情でニンジンを噛みしめる。(…実をいうとニンジンは嫌いなのだが。←まだ誰にも言ってない)
…少し前なら、きっと
嫌いでも食べなくてはダメ、と
返していたけれど。
心臓がドキドキと音を立てて
また、顔が熱くなる。
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