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 俺のメロン!!



「ねぇルーク。こっちとこっち、どっちがいい?」

「…!?」



―果たして、目の前にいるのはティアなのだろうか。



真っ白な空間の中、俺は椅子に座っていて、ティアがその前に立っている。ここはどこなのか、とか気になる前に、目の前にいるティアに違和感を感じた。


「ティ、ティア…!?ちょっお前、何してんだよっ…!」

綺麗な亜麻色の髪の毛に、蒼い瞳。見慣れた黒い軍服。見た目的には、確かにいつものティアなのだが。


「ルークはメロン、好きかしら?」

そう言って、真ん丸なメロンと自分の…、む、胸を主張している。


そういえば前にテオルの森で隠れてるとき、アニスにミュウ並みに色気無しのくせにって言ったら、怒ったアニスが大きくなったらティアみたいにでっかくなるんだからー!って言い始めたもんだから、あんなメロンになれるわけねぇだろ、と、ティアの胸をメロンに例えて言った気がするけれど。

それで、どっちの“メロン”がすきかって聞いてきたのだろうか。でもティアはメロンって言われるのすごく嫌がってたよな。


なかなか答えない俺を不思議に思ったのか、ルーク?と優しい声がして、前を向くとティアの顔がドアップであった。思わず答える声がどもる。

「す…すっ…好きだけど!!(エロいんだけど!!)」

「そう?よかった」

ふふ、と笑ったティアは、やっぱりいつものティアだ。その綺麗な笑顔に俺の顔が熱くなっていくのがわかる。思わず見惚れていると、柔く微笑みを残して俺の視界からティアがふといなくなり、

「…っっっ!!?//」

急に感じた背中に温もりでティアが背後にまわったことを知った。しかも抱きしめられている。

「(め、メロンが…!!)」

…後ろには、まさかのメロン。
ティアの思いがけない行動に、赤面して硬直してしまう。何もできずにいると、ふと一瞬温もりが離れて、それが戻ってくると同時に俺の前にひとつ、丁寧にカットされた果物のメロンがすっと差し出された。食べろということなのか、とティアの様子を見ようとしたところ、ティアの一言。


「どっちがいい?」



果物のメロンか、ティアのメロンか。




当然、理解の追い付かない俺はあたふたしはじめた。

(…どっちがいいとかいう問題じゃヌェー!!!
その前にメロンが!
まじでティアなのかよこいつ!でもすっげー可愛いんだけど!!
あーもうどこだよここっ!!!!)

激しく混乱中。

「…じゃなくて!
ちょっと待った!!…どうしたんだよ、何なんだよいきなりっ…!!」

「何でって…ルークは、どっちが好きなのかなって思ったからよ」

俺の精一杯の質問に、ティアはケロリと答えた。

「ど、どっちって…!!」

どっちがいいの?ルーク、とティアは俺の肩に頭をちょこんと乗せ、答えを迫る。

「…っ」


その温もりに、ふわっと香るシャンプーの匂いに、失神直前。

いつものティアはもちろん可愛いけれど、こういうことは恥ずかしがって絶対やらなそうで、なんだか新鮮な感じだ。

「ルーク…。…やっぱり、果物のメロンのほうが好き…?」

混乱中+優柔不断(?)で全く答えない俺を包み込んでいる腕をぎゅっとして、そう寂しそうに呟くと、…ぽんっと急に、俺の隣に何か物体が現れた。


「ん?…メロンアイス?」


それから次々と、まわりにメロンパン、メロンシャーベット、メロンケーキ、etc…
いろんなメロンの食べ物で埋め尽くされる。

メロンメロンメロン。
あっちもこっちもメロン。


メロンのいい香りが漂うメロンパラダイスの中、ティアはそばにあったメロンアイスをスプーンですくい、一口俺に食べさせてから、俺の肩に顔を埋めた。そして、ぽつりぽつりと話し始める。

「私ね、ナタリアやアニスみたいに素直じゃないし、可愛いくないけど…」

「…うん(そーか?ふつうに可愛いと思うけど…)」

「だけど、ルークのこと…すき…なの…」


「!?」


その突然のティアの告白。あまりにびっくりしすぎて、自分でもびっくりするほど、目が大きく開いてしまった。心臓が壊れるんじゃないかってほど大きくバクバク音を立てている。それを少しでも落ち着かせるように深く深呼吸をしてから、口を開いた。

「…っ…その、俺も…ティアのことが……す、すき…です…」

「ほんと…?」

約束をしたときあたりから目が離せなくて、気付けば好きになっていたティアと、想いが通じ合ったそのとき、長い間包まれていたティアの腕がほどかれ、

「ルーク…だいすき」

頬に手を添えて、顔を近づけてきた。

(こ、これは…っキス…するってこと…!?)

半分混乱しながらも、ゆっくりと目を閉じる。幻じゃないよな、と確認するためにうっすら目を開けてティアを見ると、


「!?!?」


そこには…。


「…ルーク?」


──目の前にいて、唇を尖らせて待っていたのは…


「………!?
…、…!!!!!!(驚きすぎて声がでない)」


「ルーク、どうしたの?」


ヴァン師匠、でした。

そこにいたはずのティアは消え、ティアと同じ口調のヴァン師匠がいる。しかもまわりのメロンも消えて、なぜかキノコやルグニカ紅テングダケが現れた。

そんな。
そんなそんなそんな。

せっかく…せっかく…ティアと一緒に、イチャイチャしながら食べようと思ってたのに!!!!でもって、俺はティアのメロンが一番好きだ☆とか言っちゃう予定だったのに!!←

どこに消したんだ、返せよ
「俺のメロン!!!!!!(ティア含)」


「「「──え?」」」


「…………ん?……、……あれ、みんな…?」

―青い空、白い雲、柔らかな緑色の草。ヴァン師匠は目の前にいないし、まわりにはキノコもない。そして代わりに、俺のメロン発言とともに起き上がった俺を、安心した様子で見つめる仲間たちがいた。(約二名はニヤニヤしているが)


(俺、いま…起きた?)


いまのこの状況に理解出来ずにいると、ガイがこちらに歩み寄ってきて、安心したように笑い、俺の頭にぽんっと手を置いた。

「お前、敵に頭やられて、気失ってたんだぞ。覚えてるか?」

その手が置かれたとき、頭に走る微かな痛み。それとともに記憶が舞い戻ってきた。

「──…あ、そうだ。ティアが危なかったから、飛び込んだんだっけ…?」

それを聞き、うん、とガイは頷く。そのあとティアは大丈夫だったか心配になり、ふっとティアを見てみる。が、先ほどのティアを思い出してしまい、顔が真っ赤になって動けなくなってしまった。

「…っ…」

「ルーク…ごめんなさい、私の不注意で…。…もう大丈夫なの…?」

そんなことに気が付かないティアは、俺が座っているところの隣に座り込み、顔を覗き込んできた。ティアが可愛くて直視できなくて顔を反らすが、やっとはっきりしてきた頭で事実に気付き、複雑な気持ちになった。

「だっ…、大丈夫だっつーの、あれくらいっ!」

夢だったのか。

まあ、ティアが俺のこと好きだなんて、ありえないもんな。ただの仲間だって思われてるに決まってる。さすがに夢の中では都合よく、両想いになっていたけど。それに、あのままだと夢の中だとしても、ヴァン師匠にキスされてるところだった。…よかった、目が覚めて…。

そのなんとも言えない複雑な気持ちを振り払うためにバッと立ち上がると、──先ほどからニヤニヤと笑いながら俺を見つめてくる、約一名と目が合った。ものすごく、嫌な予感。

「ねえっ、ルーク!」

「な…何ですか、アニスさん…」

ちょんちょんと俺の服の袖を引っ張るアニス。もちろん、ニンマリと最上級の笑みを浮かべて。


「“俺のメロン!!!!!!”…って言ってたけどさぁ〜、何の夢見てたのぉ〜?」

「…!!!!」

「あ〜、確かにさっき言ってたな。ルーク、何の夢見てたんだ?」

「私も気になっていましたわ!」

「そうね、私も少し気になってたわ」

「…どうするんですか、ルーク。みんなあなたの見てた夢に興味深々のようですよ〜?」

アニスの爆弾投下により、一気に話は俺の夢へと移る。興味深々な目で見つめる仲間たち。アニスとジェイドは気付いているのか、なんか…無駄に黒い微笑みだけれど。逃げ道を奪うように仲間たちが俺を囲む。


「ルーク、どんな夢見たんだ?」

「そうですわ。別に言って損するわけではありませんし…」

「ナタリアの言う通りです。損する訳じゃないんですから♪」←大嘘

「ルークっ、言っちゃいなよ☆」


「…正夢にでもしたいことなの?」



「〜〜〜っ!!絶対言わねぇ!!!!」


アニスとジェイドをキッと睨みつけて、ティアとガイの間に空いていた隙間から逃げ出す。


その日の夜のデザートは、メロンだった。






fin
――――――

メロン食いたい…と思ったときに思い付いたネタです。

あほな話になりました。

ルークは普通にエロいと思います。←

ギャグのつもりで書き始めたけど、ギャグになってるのか…?



090827 べべ

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