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「はぁっはあっ……」

名前はひどい貧血を起こし、荒い呼吸をしながら零にもたれかかっていた。


「うそ………零が………ヴァンパイア?」

優姫はまだ目の前の出来事が信じられずにいる。最近顔色が悪く、様子がおかしいとは思っていたがまさかこのような事実があったとは思いもよらなかった。


「優姫………俺は……」
「名前!」

そこにルキが珍しく焦った様子で2人の間に入り、零の腕から名前を取り上げた。
「おい名前っ」
「ル……キ…?」

「っ意識はあるようだな……少し、我慢しろ」

そう言うとルキは名前を抱いたまま自分の腕を捲り牙を突き立てた。そして自分の血を吸うと今度は名前に口移しで血を分け与えた。ヴァンパイアは吸血することによって自身の治癒力を高める。純血種なら尚更のことだ。

「んっ………はぁ…」「うっ………ごくっ」

優姫たちは目の前の光景から目が離せなかった。魅せられていたのだ。元々ヴァンパイアは見目麗しいもの。重ねてルキの名前を想う優しい心が行動に現れていた。そして回数を重ねるごとに名前の顔色に血の気が戻ってきた。

「大丈夫か。名前」

「ん……大丈…夫。ありがとう」


ルキは自分の口元に付いている血を拭い自分に体重をかける名前を抱き直した。

「フッ……お前はもう少し休んでいろ。眠れ」

「うん……おやすみなさい……」

ルキは優しい表情で名前を見ていた。そして名前が寝たのを確認すると一瞬で自身を取り巻く空気を冷たいものに変え、それを零にぶつけた。

「っ!」

「だいぶ吸血したが……錐生零…お前に1つ聞く。


――――それほど名前の血は美味しかったか?」

「……っ…」


「まぁ答えなど関係ない。お前が血を吸ったという事実が変わらないのだから。......低能なお前に教えてやろう。
お前の罪は2つ……
純血種である名前の血を流させたこと……………
そして……

この俺の物に手を出したことだ。いくら名前が自rら行動した結果とはいえ、お前が傷つけたという事実は変わらない」


「お……れはっ」

何も言い返せないでいる零にルキは更に追い討ちをかける。

「全く……反吐が出る。風紀委員だのハンターなど称してもお前は所詮この程度の者だったということだ。

そして黒主優姫、お前も知っておくといい……

ヴァンパイアは__________」


「無神先輩!それってどういう、」
「優姫」

「!枢先輩っ」

優姫はルキの言った事がわからず追及しようとしたがそれは上の階段から現れた枢によって遮られた。


「無神くん。後は僕に任せて。彼女を休ませてあげよう」

「お前に指図されようとそのつもりだ。


おい錐生。もし次お前が名前を吸血したら――――






その時はお前の周囲を取り巻くもの全てこの俺が消してやろう


じゃあな」

「っ!」


そう言い残すとルキは名前を抱いたまま一瞬で消えた。


「………理事長、来ているんでしょう」

枢は優姫に近付くと横抱きにして言った。後ろにはいつの間に駆けつけたのか黒主理事長がいた。

「うん………零、こちらに___」



「枢センパイ!私は別に……」

「さっき名前に押された時、手を擦ったでしょ?見せて」

優姫の手を取り上げて確認する枢に理事長がストップをかけた。

「待って、枢くん。ちょっと教室に行ってくれないかな。血の匂いでナイト・クラスがざわついてきているんだよ……」

「…はい」

優姫を連れて保健室に行こうとした枢を理事長は止めて教室へと行かせた。零はすでに理事長に指示されて何処かへ消えていた。
そうして理事長は手当てをしながら優姫に零の事を話した____




――――――――




ルキは自分の部屋に来ていた。彼は名前を抱えたままベッドに辿り着くと、優しく彼女をベッドに下ろした。
そして枕元に腰掛け、名前の頬を撫でた。


「全く…………不愉快極まりないな。お前は俺以外に血を吸わせるなと何度言ったら分かるんだ」

眠っている彼女に語りかけた。
言葉こそ怒りを示すものだったが紡ぐ声音はとても優しいものだった。


「お前は俺のものだろう……?

何故奴にも優しい……お前のその優しさは残酷だな」

「ルキも………貴方こそ優しすぎるのに……」

いつの間に起きていたのか、目を閉じたまま名前は言葉を発した。

「起きていたのか」

「あの後零くんを傷つけなかったでしょう…?私がしたことは貴方との約束を違えてしまうことなのに貴方は私を助けてくれた……」

名前は回復したのかしっかりとした口調で話した。ルキは頬を撫でながら黙って話を聞いていた。


「この俺が優しいだと…?なにを世迷い言を……っん」

そう言いながら名前の首に顔を近付けて零の牙の後を舐めた。

「まだ血が出ている……憎たらしい痕だ。


フッ、では俺との約束を違えたお前に罰だ。

…………この傷が消えるまでお前の血を吸い続けてやる……

……は……っ、ん……。
名前……。」



窓からは月明かりが覗いていた。



mokuji
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