04

前日、コウに古文を教えてからというものの、移動教室やら休憩やらいろいろ付きまとわれるようになった。

...懐かれたのだろうか。時々彼に犬のしっぽのようなものが見えるのは案外幻覚ではないのかもしれない。

彼は今日、アイドルの仕事らしく学校に登校していなかった。久方ぶりに1人で学校を過ごすことになった私は試験勉強追い上げのため、図書室へ来ていた。
この学校は図書室が充実しており、勉強には大助かりだ。

借りていた世界史の参考書を返し終えると、借りる気はないが少しだけ本棚の方へ足を進めた。高い本棚が所狭しと並ぶなか、見覚えのある人影があった。



彼は......無神ルキだ。コウの兄の。
コウに初めて勉強を教えてから顔を合わせたことはなかったものの、記憶に残っていた。

彼が立っている本棚の種別を見ていると、ルキがこちらに気付いた。

「お前は...この間コウに古文を教えていた睦月名前か。奇遇だな」

「こんばんは、ルキさん。覚えていただけて光栄です。...何の本を読んでらっしゃるのですか?」

本を片手に持ってこちらを見ていた彼は、表紙に目をやる......哲学の本だ。


「ああ、もう読み終えてはいるのだがな。ふとしたときに読みたくなってくる。
 

 ...睦月は、この後時間があるか?」




「えっ大丈夫ですが...何か?」



「ただ、少しお前が気になっただけだ。コウはアイドルをやっているからファンは多いものの、友人と呼べるような関係はいないからな。」



急にビックリした。...心臓に悪い。



クラスメートから無神ルキという同学年の人物の話題を振られたことが何度かあるか、いつもコウから聞いている印象と違っていた。
紳士のような振る舞いなのに、どこか冷たい人という話をよく聞いていたが、彼の弟から聞く印象とは全く違う。
しかし、今私の目の前に立っている人物は弟をよく見ていて、大切にしている良いお兄ちゃんだ。......私の兄とどこか似ている。


「まだ会ってから日は浅いんです。しかし、放課後に古文を教えている時に打ち解けてそれ以来、一緒に行動することが増えましたね」


「ああ、弟から聞いた通りだな。.....これからもよろしくやってくれ。俺からも頼む」



「...はい、こちらこそよろしくお願いします」



会話も途切れ、ルキさんも用事が済んだのかその場はお開きとなった。





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